第十五章 霊媒師 打ち上げ、そして黄泉の国の話

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「オイ、オマエ! 鼻血が止まらないじゃないか! これを使え!」 差し出されたのはキレイな白いハンカチで、それで血を拭えと言われたが、とてもじゃないけど使えなかった。 心配半分、呆れ半分といった表情(かお)のその人は、二十代前半くらいの若い女性でね。 正直……息が止まるかと思ったよ。 彼女はあまりに美しかった。 その容姿は芸術作品のようなのに、話し方はすこぶるガサツ。 いきなり鼻血を出した怪しいオジサンに、迷う事なくハンカチを出す優しい子。 パーフェクトなギャップ萌えに、思わず拝みそうになる程だった。 自分は元スタントマンだからね、撮影現場にいた、世間で美人と言われる女優もアイドルもたくさん見てきた。 彼女達も十分美しかったがその比ではなく、まさに女神としか言いようがなかったよ。 「落ちた時にどこかぶつけたのか?」 自分を覗き込む女神の髪が揺めき輝いているのだが……コレどうなっているんだ? その髪は、近くで見ると宇宙そのものに見えた。 黒髪という夜空には、ダイヤモンドを散らしたような、小さな無数の星達が眩い光を放っていてね。 女神が動くたびサラサラと髪が揺れ、それに連動して星の位置も変わる。 触れてみたい……という衝動をなんとか抑え、彼女の質問に答えたんだ。 「いえ、大丈夫です。どこもぶつけていませんよ。自分は元スタントマンですから、あれくらいの落下はなんの問題もありません。問題があるとすれば……くっ! ちょっと失礼!」 自分は何年も着古したTシャツを慌てて脱いで、失礼を承知で女神に差し出した。 「あの! Tシャツ(これ)を着てもらえませんか? 汗臭くて申し訳ないのですが、どうかお願いです、なぜって……! あぅ……その……つまり……アナタが! アナタが美しいからです……自分、目のやり場が、」 本当にねぇ。 あの格好はオジサンには刺激が強すぎた。 そりゃあ鼻血も出るよ。 だってさ、身体を覆う布の量が圧倒的に少なかったんだもの。
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