第六章 霊媒師OJT-2

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高校も3年になると、進学か就職か進路を選ばなくてはならなくなりました。 私は考えた末、就職を希望しました。 早く仕事がしたかった訳ではありません。 進学を希望したって、どうせ許してもらえるのは家から通える田舎の大学だけです。 東京の大学はおろか県外の学校だって反対されるのは目に見えています。 だったらいっそ就職してしまおう、自分でお金を稼いで好きな事をしよう、東京に社員寮がある会社ならどこだっていい。 そう思って、いえ、そう思いあがって、東京の社員寮がある会社を受けました。 その事を知っていたのは母だけです。 母は、お父さんにも相談しないと……って何度も言っていましたけど、私がそれを止めました。 「お母ちゃん、私ね東京で美容師になりたい。でもそんな事言ったらお父さんに反対される。だからまずは東京で就職して、自分で学費を稼いで美容師の学校に行く。昔からの夢だったの。お願い、応援して。お父さんにはギリギリまで内緒にして」 親不孝でしょう? 美容師になりたいなんて思った事もないのに、それらしい嘘ついて母を騙して、父に嘘をつかせて共犯者に仕立てたの。 母はね父に嘘をつきたくなくて相当悩んで、それでも結局私を信じて黙っていてくれたわ。 苦しかったと思う、でも、そんな母の気持ちも考えず私は浮かれていたの。
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