第十五章 霊媒師 打ち上げ、そして黄泉の国の話

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◆ 女神の細い指先が宙を叩くと、空中に巨大なDOS画面のようなものが出現した。 女神は立ち上がり、腰に手をやり上から順に読んでいる。 一緒になって見てみれば、なんじゃこりゃあ! コレ、自分の経歴がズラーっと記載されてるじゃないの! 上から順に、40年前に生まれた日のコト、小学校、中学校、高校、単身中国へ、帰国後スタントマンへとギッチギチに記されている。 「うわぁ! 見ないでぇ!」 慌ててDOS画面の前に躍り出るが、女神はジャマだと自分を振り払う。 なんの罰ゲーだよ……高校2年生の欄には初めて女の子とデートしたコトまで書いてあり、顔から火が出る思いだった。 「そうか、本当の死因は他殺だったんだな、」 最後までを読み終えたのか女神が静かに言った。 「他殺……?」 「ああ、他殺だ。酔っぱらって転落死しただけかと思ってたが、廃ビルに憑りつく地縛霊達に引きずられたんだ。ケツから30行程さかのぼるとそう書いてあったわ。悪いな、最後までちゃんと読んでなかった」 女神にそう言われ、自分もDOS画面を読んでみると、確かに書いてあったよ。 地縛霊4体による他殺ってね。 「どこの惑星の生者でも、死んだあとの魂はみんな黄泉の国に集まるコトになっている。ジャッキー、オマエもそうだ。光る道が来ただろう? あの道は、光る道を管理する操作台から、各死者の足元までオペレーターが伸ばしているんだ。迷ったりしないようにな」 「そうだったんだな。死ぬの初めてだから知らなかったよ」 真面目に答えたつもりだったのに、女神はプッと吹き出して、 「そりゃそうだ。そう何度も来れる所じゃないからな。ましてや地球人の命は1つしかないし、」 「ははは、そうだよね。……ん? 地球人の命は1つだけって……そんなの当たり前だろ? それとも何かい? 別の星では複数の命を持つ人がいるのかい?」 「たくさんいるよ。他の星のヤツラは『地球人って命1つしかないの!? それ不安じゃない!?』ってスゴイ驚いてる。どこの星でも命は2つ3つ持ってるのが普通だもの。この辺で一番多く持っているのは……コニ星の猫族だ。ヤツラの命は全部で9つだからな」 「スゴイな……地球でも猫には9つの命があると言われるけど、コニ星……だっけ? そこの猫族と関係があったりして」 「ああ、大アリだよ。あれは大昔、コニ星の宇宙探検隊が地球に降りて、秘密裏に調査するはずが大酒飲んでペラペラ喋っちまったんだ、しかも人語で。ま、うまい具合に今じゃ迷信だってコトになってるし、地球にいる猫とコニ星の猫族は姿が似てるだけで身体の構造は別物だから、それほど騒ぎにはならんかった」 そう言って楽しそうに女神は笑った。
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