第十五章 霊媒師 打ち上げ、そして黄泉の国の話

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「ジャッキー、ここに入るぞ!」 バシッと背中を叩かれて、半ば強引に連れられたのは、オシャレすぎる美容院だった。 「ちょっと! 女神! こんなトコ無理!」 普段千円カットの5分で終了な散髪事情だというのに、しかもココ数年は引きこもりでそれすら行っていなかった。 伸びたらテキトウに自分で切っていたのだが、最近では面倒で長髪をひとつに結んでいる。 ガラス扉の奥はこれまたオシャレな造りになっていた。 壁一面が大きな鏡になっていて、そこに映る自分の姿に唖然とした。 誰だ……? この薄汚い中年は…… 白髪交じりの長髪は結んであるとは言え清潔感がなく、ヨレヨレのTシャツに着古したジャージがみすぼらしくて、スニーカーにこびりついた泥が半分乾いてまだらになっている。 ほとんどホームレスのような格好だ。 身だしなみに気を遣わなくなって数年。 鏡すらまともに見なかった結果がコレだ。 女神は店員らしき女性と親し気に話している。 時折自分を見てヒソヒソしているのだが、「あの汚いジジィをどうにかしてくれ」とでも頼んでいるのだろうか? ホントにゴメン。 それにしても、よくもまぁ、あんなに若くてキレイな()が、自分みたいな汚いオジサンに嫌な顔もせずに接してくれて……ありがたい限りだよ。 「お待たせしましたぁ」 間延びしたのんびり口調で近づいてきたのは、女神と話をしていた店員だ。 彼女は地球の、しかもアジア圏を思わせる容姿をしているのだが、背中には大きな片翼が生えていた。 きっとどこか別の星の宇宙人なのだろう。 「はじめまして、ジャッキー。今日はどんな感じにす____やだ! こんな時にどうしよう!」 急に慌てだす片翼の店員……って、 えっ!? どうしたんだい!? 突然店員の身体が宙に浮き、手足をバタバタとさせてるじゃないの! 「キャー! コッチは接客中だってのに、もうっ! あわわわわ! ……ッ! 店長ーッ! こっち来てー! アタシ口寄せされちゃったみたいなのぉ! ちょっと呼ばれて現世まで行ってくるから、ジャッキーをお願、」 ブンッ! 短い電子音のような音と共に、片翼の店員は姿を消した。
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