第十五章 霊媒師 打ち上げ、そして黄泉の国の話

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「消えたーーーー!! どこ行ったの!? “クチヨセ”ってナニーーー!?」 小汚いオジサンのパニックほど見苦しいモノはない。 分かっちゃいるが、目の前で人が1人消えたのだ。 テンパるなって方が無理だろう。 とその時、野太い声が上から降ってきた。 「あらあらあら、ジャッキー少しは落ち着きなさいな。ごめんなさいねぇ、いきなり担当が消えたらびっくりしちゃうわよねぇ。代わりに引き継がせてもらった店長のタッキーよん。よろしくねぇ」 バッと見上げると、さらなる衝撃がかえって自分を無口にさせた。 そこにいたのは巨大なタコだった。 横綱級の身体は薄桃色で、赤ちゃんみたいなすべすべの肌、黒くつぶらで潤んだ瞳……彼……いや、彼女か……? とにかくそのタコ店長は、スラリと長い8本の足についた吸盤で、天井に張り付いていたのだ。 「待っててぇん。今、そっちに行くわぁ」 ボトッ!! タコ店長は随分とワイルドな方法で降りてきて……というか落下した。 「イテテテ……あらまぁ、近くで見ると、ますます改造のし甲斐がある子ねぇん!」 子って……自分、40才の中年なんですが。 店長っていくつなんだろう……? まったく予想がつかない。 「で、ジャッキーはどんな風になりたいの?」 「………………」 「あら? あらあら? もしかして緊張してる? んほぉ! かわいいわねぇ!」 オシャレな店構えに圧を感じていたが、それどころではない。 タコ店長のキャラはもちろんだが、それ以上にビジュアルが気になって仕方がない。 自分の中で膨れる疑問が抑えきれず、失礼かとは思ったが質問を投げてみた。 「………………あの、店長はその……火星人の方ですか?」 「んま! 出たわ、またその質問! ジャッキー、アナタ地球人でしょ! 地球人ってタコ族を見ると必ず言うのよねぇ。違うわよ、だって火星には海がないじゃない。あんなトコ住めないわよぉ。ワタシはコナモノ星出身。で、そんなコトよりどうなりたいの? ワタシがジャッキーをイイ男に変身させてあげる」 火星人じゃなかった。 生きていた頃、UMA系の雑誌やサイトで店長によく似た火星人を見たんだがな(CGやイラストで)。 話は戻り、タコ店長は自分をイイ男に変身させてくれると言うが、元が大した事ないのだ……そう期待はするまい。 ただ、女神に恥をかかせない程度に整えてもらえたら。 「憧れてるタレントとか俳優はいないの? もしいるなら言ってちょうだい。ジャッキーの記憶から画像を取り出して、極力それに近づけるわ」 え? そんなコトができるの? だとしたら1人しかいない! それは尊敬してやまない世界的大スター、ジャッキー・〇ェン!
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