第六章 霊媒師OJT-2

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父にばれたのは高校の卒業式も終わって、上京する1週間前の事でした。 それまで父には進学も就職もしないで家で家事を手伝うって事にしておいたの。 一人娘の私を溺愛していた父は特に反対する様子もなく、むしろ嬉しそうで、 「母ちゃんと貴子にうまいもん食わせる為に一生懸命働かねぇとな」 そう言って笑っていました。 それからこうも言っていました。 「貴子はそのうち嫁にいっちまうんだ。それまで家にいてくれるんなら、こんなに嬉しい事はねぇ、俺は幸せだ」 と。 それはもう本当に嬉しそうに何度も何度も言うんです。 私が幼かった頃のアルバムを引っ張り出しては、こんなに小さかった貴子がこんなに大きくなったって、これからは貴子の作ったメシも食えるようになるのかなって。 年甲斐もなくはしゃぐんです。 そんな父を見て私はもう何も言えなくなりました。 自分の事ばかりの身勝手な嘘に後悔も覚えました。 いつ本当の事を話たらいいのか見当もつきません。 だけど私以上に母の苦しさは想像をこえるものだったと思います。 そしてとうとう耐えきれなくなった母が父に本当の事を話したんです。 その時の父の怒りようといったら震え上がる程でした。 それでも決して私に手をあげるような事はしません。 ただ、父の目が真っ赤になって今にも泣きだしそうだったのはよく覚えています。 身体が大きくていつも豪快に笑っていた父が少し小さく見えました。
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