第十五章 霊媒師 打ち上げ、そして黄泉の国の話

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◆◆ 陽は沈み、空には零れんばかりの瞬く星が、大地には薄紫の夜光花が。 遥か遠く地平線では、この二つが薄く霞み混ざり合っていた。 「女神……その、すまない、」 センターで手続きをするはずが、女神に一言もなく目的地を変えてしまった。 なんでこんな事をしてしまったのか。 とにかくあやまらなくては。 そして、決して危害を加えるつもりはないと伝えなくては。 誰もいない夜の草原に男と2人。 若い女の子はきっと不安に思っているはずだ。 両手を高く上げ、数歩下がって距離を取った。 そして、 「本当にすまない。こんな事して どうかしてるな。だけど約束する、決して女神を襲ったりしない。すぐにセンターに移動しなおそう……いや、自分1人で行くべか。手続きは向こうで誰かに聞いて、なんとかするよ、」 溢れ咲く夜光花。 その中に立つ女神は、泣きたくなるくらい美しかった。 だがそこに昼間のような笑顔はなく、伏せた瞳には悲しみが浮かんでいた。 そんな顔をさせたかった訳じゃない。 離れたくなかった。 もう少し一緒にいたかった。 身勝手なこの気持ちが女神を傷付けた。 自分にできるのは、早くこの場を去るだけだ。 女神に背を向け、手を上げたまま陣へと向かう……が、引き止められた。 「待てよ、ジャッキー。手続きはウチがいないとできないぞ」 「……そうか。でも大丈夫だよ。向こうでなんとかする」 「なんとかならないよ……ねぇ、お願い待って、落ち着いて。ウチ、ジャッキーの気持ちが分かるんだ。手続き寸前で怖くなったんでしょう? 本当に死んじゃったんだって、実感湧いて悲しくなったんでしょう? 殺された時の事……思い出しちゃったの? かわいそうに……」 今にも泣き出しそうな女神は、まっすぐ自分を見つめてる。 一緒にいるのが楽しすぎて、殺された(そんな)事はすっかり忘れてた。 この()が心配するような理由じゃない。 ただ離れたくなかっただけなんだ。 まさか、そんな風に思ってくれてたなんて……正直に話そう。 もしかしたら、嫌われてしまうかもしれないけど、嘘をついて誤魔化して、泣かせてまで保ちたい体裁はないのだから。
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