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「なんだよ、最初からそう言えば良かったじゃないか。心配して損したよ」
夜風が宇宙色の髪を遊ばせている。
美しいその人は、自分の隣に座り呆れたように笑っていた。
「いや……だって女神は忙しいだろう? 手続きが終われば家に帰れるのに、まだ一緒にいたいなんて言いだせなかったんだ」
「そんなコト言って、強引に行先変えたのは誰だよ」
「むぅ……すまない、」
何も言えずに空を見上げれば、いくつもの流れ星が斜めに宙を切っていた。
女神のコトを願いたかったが、星はどれも一瞬で思うようにならない。
「手続きは明日だっていいんだ。今夜は星でも眺めてぼんやりしようぜ、」
そう言って女神は草の上に寝転んだ。
その時、心臓がぎゅっと掴まれるような感覚に襲われた。
見ちゃダメだ、咄嗟に目線をそらしたが……時すでに遅かった。
視界に入ったのはほんの数瞬。
なのに脳裏に焼き付き消えてくれない。
……
…………
女神が背中を地に着けた時、スカートの裾にさざなみが立った。
そこから伸びる長い脚が夜光花に照らされて、白い肌は薄く青く発光しているように見えた。
細くて真っ直ぐで滑らかで、どうしようもなく艶めかしい。
触れてみたい、至極単純にそう思った。
思うだけで触れたりはしないけど、この気持ちを恥じる気にはなれなかった、仕方がないと思った。
女神の放つ強烈な磁力に、抗える男などいるのだろうか?
そうだ、女なら誰でも良いのとは違う。
女神だから触れてみたい。
「ジャッキーも寝転んだらどうだ? こうやって星を見ると、めちゃくちゃキレイだぞ」
まったく……このお嬢さんはお気楽だ。
オジサンはアナタを前にドキドキしっぱなしだというのに。
「ジャッキー?」
無防備な二色の瞳が「隣に来ないの?」と言っている。
ああ、もう。
少しはオジサンを疑いなさいよ。
そんな目で見られたら、間違っても悪い事はできない。
「ん、なんでもない。どれ、オジサンも寝転んで天体観測と洒落込みますか」
脚に触れたい____
「あははは、言い方がオッサンだ」
「いや……人のコト言えないよ? 女神だって相当オッサンみたいな話し方してるからね?」
髪に触れたい____
「うそ!」
「ほんとだよ」
頬に触れたい____
「きっとバグだ! バラカスの翻訳システムにバグが出たんだ! ウチ、オッサンじゃないもん!」
「バグじゃないだろ。だって女神言ってたよ? バラカスのシステムはスラングすら忠実に訳すってさ」
唇に触れたい____
ムキになってバラカスのせいにする女神が、ゴロリと横にこっちを向いた。
身体をくの字に曲げ、バタバタ暴れたと思ったら、スパンコールのサンダルをテキトウに脱ぎ捨てた。
そして、素足になった足先で自分の横っ腹を蹴ってくる。
痛くはない。
そう、これはただのおふざけだ。
その証拠に「ウチはオッサンじゃない」と笑ってる。
女神のおふざけに自分も乗った。
「イテテテ! 猫じゃないんだからっ、ヤメなさいって」
可愛いな____
「リアルオッサンが若いウチに勝てると思うなー!」
「だからっ! 女の子が蹴りとか!」
勝てる訳がないよ____
「あやまるなら許してやるぞ!」
「はい? 今の流れ、自分いっこも悪くないだろ、」
だめだ、愛しすぎる____
「まぁな、でもオモシロイからやめなーい!」
「面白いで人を蹴るなー! それとな、女神パンツ見えてるぞ?」
抱きしめたい____
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