第十五章 霊媒師 打ち上げ、そして黄泉の国の話

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「……痛くないなら良かった、……ねぇ、女神。さっき自分、驚いてないように見えた?」 もう、指を鳴らす気はないようだ。 だから本当は、手を放しても良かったんだ。 だけどそうはできなかった。 咄嗟とは言えようやく触れる事ができたのに。 離したくない、このままずっとこうしていたい。 女神の磁力は怖いくらいに惹き付ける。 「……たの、」 ん? どうした、なんて言ったんだ? 声が小さくて聞き取れない。 なにを言ったのか知りたくて、自分は女神の傍に近づいた。 途端、髪の星はルビーに輝き、 同時、頬もバラ色に染まる。 「……失敗したかと思ったんだ、ジャッキーの服を着て驚かそうと思ったのに、反応が無いから……怒ったか呆れたかと思って……焦ったんだ、」 詰めた距離は、尻すぼみな小さな声を聞かせてくれた。 失敗した? そんな訳ないだろう。 せっかく驚かそうとしてくれたのに、自分が動揺しすぎたせいで不安にさせてしまったのか。 「女神、違うよ……すごく驚いたし嬉しかった。自分の服を着たアナタが、可愛くて愛しくてどうにかなりそうだったんだ、」 小さな声でも十分に届く。 息が触れ合うくらいの至近距離。 腕を放さないままその近さで目が合うと、女神は驚き、隠れる場所を探すように、自分の胸に顔を埋めた。 その瞬間、自分の中で何かが決壊する音を聞いた。 抑えていた気持ちが膨れて暴れて、女神にもっと触れたくて、女神にもっと触れてほしくて、髪も、頬も、唇も、脚も、なにもかも手に入れたくて、他の誰にも渡したくなくて、明日も明後日もその次も100年経っても一緒にいたくて、笑ってほしくて、甘えてほしくて____もう、限界だ。 華奢な身体を一気に抱き寄せた。 二人の間の僅かな隙間さえ潰そうと、その身体を夢中になって抱きしめた。 女神はほんの短く身を固くしたものの、次第に力が抜けていき、腕の中に溶けていく。 激しく心臓が暴れ出し、耳鳴りがとまらなかった。 ルビー瞬く長い髪から甘い香りが漂って、頭の芯からクラクラする。 ふと見れば、髪から覗く小さな耳が赤く染まり、まるで見たことのない果物のようだった。 自分の意識は半分飛んでいたのかもしれない。 目の前の果物があまりにも美味そうで、抗えず吸い寄せられるように唇で触れた。 すると女神は、驚いて、だが自分の背中に細い腕を絡めてくれた。 その刹那、身体は雷に撃たれたように痺れ、女神以外の何もかもがどうでもよくなった。
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