第十五章 霊媒師 打ち上げ、そして黄泉の国の話

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「ジャッキ……」 追い打ちをかけるように、女神の声が甘くなる。 背に絡む細腕が(つる)のように締め付て、柔らかくて温かい女神の身体の感触が、自分を一層狂わせた。 「……ジャッキ……ジャッキ」 繰り返し呼ぶ声は変わらずに甘く、その甘声には女神自身が戸惑って、目が合うと泣き出しそうに伏せてしまった。 「女神……こっち見て、」 お願いするも、女神はむずがる赤子のようにイヤイヤと首を振る。 「女神……顔を見せて、」 伏せた顔を見せてくれない女神に焦れて、星の髪に唇をつけた。 途端、小魚が跳ねるように、毬が跳ねるように顔を上げた。 「女神……やっと見れた……もっと見せて」 左右異なる二色の瞳は潤み、熱がこもっていた。 その熱は自分にも伝染し眩暈が起こる。 大草原(ココ)には自分と女神の2人きり。 邪魔する者は誰もいない。 すべてを奪ってしまおうか____ そんな考えが頭をよぎった。 気持ちが限界を越えていた。 他の誰にもとられたくない。 だが____ いや……だめだ…… なにより優先すべきは女神なのだ。 自分の気持ちに揺るぎはないが、女神の気持ちを聞いてない。 嫌われる事はしたくない。 ならせめて。 女神の体温(ねつ)を感じたくて、もっと吐息が聞きたくて、抱きしめる腕に力を込めた。 とその直後、 「ジャッキ……るし……」 なにか言おうとしている? 女神の声を聞き取ろうと、少しだけ腕を緩めて自分の耳を、女神の唇に近づけた。 すると。 「ぷは……ジャッキ……苦しいよぉ、」 緩んだ腕に何度も息を吐く女神。 細い身体に力が入らず、胸の中でクッタリと伸びている。 その様子に一気に血が引く思いだった。 愛しくて、幸せで、力が入りすぎてしまったようだ。 「ああ、すまない……! 苦しかったよな、痛かったよな!」 クソッ! なにやってるんだ。 余裕なさすぎだろ。 この()に痛い思いをさせてしまった。 ああ、女神さま。 どうか自分を八つ裂きにしてください。
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