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「ごめん……悪かった。ただ……40のオジサンと17の女の子では親子くらいの年の差だ。やっぱり考えてしまうよ。
だからといって……アナタを好きじゃなくなるかと言えばそうじゃない。困った事に、この気持ちは簡単には消えてくれないんだ」
自分を見上げる瞳には、今にも零れそうな涙があった。
引き寄せて背中をさすってやりたいけども、それをグッと我慢する。
華奢な身体と唇を震わせて、それでも女神は懸命に声を絞り出した。
「だったら……そんなコト言わないでよ……ココは黄泉の国だもん、いろんな星の死者が集まる国だもん、見た目も年も関係ないよ」
女神の言葉に街で見た死者達を思い出していた。
てんでばらばらな容姿の死者達は、誰もかれもが楽しそうに笑ってた。
互いの相違を、種族の違いを気にするでもなく、誰がいくつだと騒ぐ者もいなかった。
だけど問題はそこじゃないんだよ。
「ん……そうかもしれないけど……一度頭を冷やそう?
……あのね、聞いてくれる? オジサン、女神が好きなの、大好きなの。大好きだから大事にしたいの。だけどね、その気持ちと同じくらい、女神を抱きしめたいの。さっき言ったろう? アナタだから触れたいって。女神に好きと言われてオジサンすごく嬉しかった。だからこそ分かってほしい、女神を傷つけたくないんだ。17才は女じゃない、少女だよ」
「……少女って……それって……恋愛対象じゃないってコト……?」
小さな肩が頼りなくて、今すぐ抱きしめてしまいたい……が、
「そうだ、」
辛いな。
これが正しいのかどうかは分からない。
17才で死んだ女神は、黄泉の国で15年生きてきた。
この娘の言う通り、32才の女性だと思えばいいのかもしれないが……こればっかりは性格だ。
女神を傷つける者はすべて排除したい。
それがたとえ自分であっても。
「ズルいよ……好きにさせたのはジャッキーなのに……」
ねぇ____と女神は腕を伸ばした。
細い指はためらいがちに宙を泳ぎ、叶う事なら触れてほしいと切に願った。
泣き顔は、胸が鳴る程艶めいて目が離せない。
張り付くように喉が渇いて動けずにいると、やがて指は自分の頬を掠め過ぎ、左の耳朶に爪を立てた。
ギリリと爪先が喰い込んで、痛みと甘さでジンジンと脈を打つ。
「…………ねぇ、甘いの。こうしてジャッキーに触れた時、ジャッキーがウチに触れた時、甘くて幸せでおかしくなくなるの。……ジャッキーはウチを抱きしめたいって言ったよね? それがダメなコトとも言ったよね? でもね、ウチもジャッキーを抱きしめたいよ。さっきみたいにされたいよ、好きだからされたいの。そう思うのはダメなコトなの?」
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