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星の雨を眺めていた。
空は低く、数多流れる星々が斜めに降る雨に見えた。
濡らさぬ雨の元。
片手は頭の下に、もう片手には眠る女神を抱いたまま、大草原のベッドに二人、横になっていた。
こんなに幸せでいいのかと思う。
愛しい女が腕の中。
細い身体に古いTシャツ1枚で、猫の仔のように眠っている。
胸にあたる女神の寝息がくすぐったくて、ついつい顔が緩んでしまう。
この幸せは自分の命と引き換えだ。
死んで黄泉の国に来れたから、ここで女神に出逢えたから、だから今この夜がある。
こうして女神といられるのなら、命などいくらでもくれてやる。
緩く風が吹き、夜光花がふわりと揺れた。
昼間見た花はどこにいってしまったのだろう?
時間で色を変える不思議な花は今はなく、一面、薄紫に光る夜光花だけが広がっていた。
黄泉の国は不思議な場所だ。
地球の現世とはまるで違う。
花も、陣も、街も、大草原も、ここに住む人達も、すべてが目新しい。
数々のシステムは歴代の天才達が造ったと聞いた。
通貨の概念がなく、平和と公平が約束された国。
愛しい女が住む国。
幸せだ。
こんなに満ち足りた気持ちは初めてだ。
スタントで大技を成功させた時でさえ、女神との時間には勝てない。
「ん……ジャッキ……」
女神が目を覚ましたようで、腕の中で細い身体をモゾモゾさせている。
眠そうな顔を上げ、一瞬目が合ったものの、すぐに顔を埋めてしまった。
ああ、顔が見たい。
だけど、これもまた幸せだ。
髪に瞬く星々が青色に明滅していた。
白色と赤色は見たけど、青色にもなるのか。
どうも星の色は女神の感情とリンクしているようだった。
ダイヤモンドの白は平常時、仕事中はだいたいコレだ。
ルビーの赤は照れた時、怒った時、感情が昂った時。
なら青は?
あとで聞いてみよう。
「おはよう、」
女神、と続けようとして言葉を止めた。
耳に響いた優しい声を思い出したからだ。
名前を呼んで____
名前で呼んで____
ウチの名前は____
「……マジョリカ、」
それは古きイタリアの陶器の名前なのだと言っていた。
白地に色が重なって、鮮やかで美しい絵が描かれているのだと。
マジョリカ、綺麗な名前だと思った。
女神にぴったりの名前ではないだろうか。
名前を呼ばれたマジョリカは、恥ずかしそうに顔を隠してしまった。
髪にキスして「こっち見て、」とお願いすると、自分の胸に唇をつけてから、ゆっくりと顔を上げてくれた。
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