第十五章 霊媒師 打ち上げ、そして黄泉の国の話

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かくして自分が直すコトになったのだけど、どうしたらいいのか分からない。 マジョリカのように指を鳴らすだけで、何かを発動させられればいいんだけど、そのやり方が分からない。 こりゃ、しばらく彫金屋さんで修行を積むしかないかな? マジョリカの為ならオジサン、頑張っちゃうよ? 「修行は積まなくていいよ。指を鳴らしてイロイロするのは、今のジャッキーにはできないと思うけど、一つ方法があるんだ」 マジョリカの説明はこうだった。 まずは基本的な事をなるべく簡単に。 何故、黄泉の国では指を鳴らすだけで物を出したり消したりできるのか。 これは前提として、死者の身体や黄泉の国にあるすべてのものが、電気で出来ている事に由来する。 すべてのものは電気の集合体である。 ここに広がる大草原の草木の一本一本も、マジョリカの身体も、自分の身体も、他の死者達も、街にある高層ビルも服も食べ物もなにもかもだ。 ここで勘違いしてはいけないのが、地球をはじめ各星々に存在する生活電気(・・・・)とは似て非なるモノであり(共通する点は多いが)、従来の先入観は捨てなければならない。 物を新たに造るには、素材となるフリーの電気を必要な分だけ集め、組み立て、形を造り替えればいいという。 ただし、創造予定物の構造を詳細まで理解していなければそれは叶わない。 必要なパーツを一から造り、膨大な量のパーツすべてが揃ったら、それらを正しく丁寧に構築させなければ完成しない。 数千年前までは、物を造るのは一部の職人だけだった。 だが、時を経る事に増えていく天才死者達が長年の研究を重ね、誰でも必要な時に必要な物を手に入れられるようにしてくれた。 一般的に、必要とされる機会が多い物に関しては、完成品をいくつも造り、それらを超圧縮技術で限界まで縮小させて物品倉庫に保管。 物品倉庫は一定の範囲内に多数点在している。 死者は必要な物があれば、倉庫にある在庫を取り寄せればいい。 具体的にどう取り寄せるかというと、死者から倉庫までを電気の線で結び、その電気線に吸着させて手元に届ける。 届くまでの時間は、ほんの半瞬にも満たない。 それはマジョリカの早着替えを見れば、決して大袈裟な話でないと分かるだろう。 ではその電気線はどう出現させればいいか。 死者歴も長くなり、慣れてくれば指を鳴らすだけで出来るようになる。 が、死者になり間もない者や、どうしようもなく不器用な死者は、うまく電気線を出せない者もいる。 そんな困った死者達は、電気線を出現させるための専用ツールを利用すればいい(ネックレスや指輪、ステッキなどデザインは多数)。 電気線さえ確保できれば、取り寄せた物品が手元に届くと同時に、解凍・再構築されるのだ。 マジョリカが行った0.02秒の早着替えも、出現させたコーヒーもこれにあたる。 ちなみに街で飲み終えたコーヒーの紙コップ。 これを消したのは、紙コップを構築していた電気信号を分解し、再構築する事なくフリー素材に戻したからだという。
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