第十五章 霊媒師 打ち上げ、そして黄泉の国の話

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そうなると分からないのが、美容院でタッキー店長にあつらえてもらったカンフースーツと、マジョリカがサプライズで着替えてくれた古い部屋着だ。 この2着に関しては、【必要とされる機会が多い物】とは言えない。 特に自分のヨレたTシャツやジャージなぞ、喜んで着るのはマジョリカくらいなものだ。 物品倉庫に在庫としてあるはずがない。 そこを聞いてみると、さっきから何度か出てきた【電気のフリー素材】というものが関係するらしい。 歴代の天才達は、誰でも自由に使える電気のフリー素材を、黄泉の国全体に流しっぱなしにしているという。 目に見えないだけで、各所には常に電気ある状態だ。 そのすぐ傍にあるフリー素材を必要な分だけ集め、好きな形に構築すれば、在庫にないオリジナルの物を造る事ができる。 数千年前の職人達がそうしていたように、自分の手で造るのだ。 ただ、数千年後(・・・・)の今時の死者達は、ごく一部の者しかパーツから作成し物を完成させるなんて事は出来ない。 それが分かっていれば、タッキー店長が初めて目にした【地球のカンフースーツ】を、完全に一致レベルで造りだした事が、どれだけの偉業だったのかと思い知る。 そして店長は、元々着ていた自分の部屋着を分解しフリー素材に戻さずに、圧縮させてマジョリカに渡していたのだ。 ____店長から服のデータもらっといたんだ。びっくりしたか? このセリフだ。 マジョリカは、着ていたワンピースをフリー素材に戻し、かわりに圧縮していた古い部屋着を解凍して身に付けたのだ。 フリー素材と電気線、これらは、あえて無色透明にしているそうだ。 そうでないと、宙に漂うフリー素材や、各死者が放つ電気線が可視化してうっとうしいコトこの上ない。 またフリー素材の電気が、常に近くにある状態は、同じく電気信号の集合体である死者の身体にも恩恵をもたらす。 激しい運動をして体力が消耗した時、労働で疲労が溜まった時、怪我で身体を傷付けた時。 そんな時、宙を漂う電気が死者の身体をオートで修復させる。 そこにタイムラグはほとんどない。
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