第十五章 霊媒師 打ち上げ、そして黄泉の国の話

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黄泉の国(ココ)に来たばかりの死者が、最初にする練習法でサイズ直しができると思うんだ」 とマジョリカは張り切っている。 ちょっとココは気合入れて頑張らないと。 カノジョにイイトコ見せたいじゃない。 「ジャッキー見てて。ウチ、今から簡単な構築のお手本を見せるから。数千年前の職人達がそうしたみたいに、無から有を造る……の基礎。入門編ね」 「入門とはいえ難しそうだなぁ、」 「そんなコトないよ。これから見せるのは、小さな子供がブロックを重ねるくらいの構築なの。目に見えないけど、今だってウチらのまわりには、たくさんの電気が帯電してるから、それを少しいじるんだ。じゃ、早速やってみるからね、」 マジョリカは両手を、水をすくう時のように湾曲させて頭上高く上げた。 そして、 「ジャッキーと一緒にアイスが食べたい! 2人で半分こにするから、キャラメルバニラをカップに入れて、スプーンもほしーい!」 え! なんでアイス!? と驚いた次の瞬間、もっと驚いた。 マジョリカの手のひらが緑色に発光したと思ったら、もうアイスとスプーンが出現したのだ。 「え! え! え! アイスだ! 本物のアイスが出た! マジョリカ、指鳴らしてないのに? これが無からアイスとスプーンを構築したってコト? スゴイな!」 えへへ~と、褒められてご満悦なマジョリカは、さっそくアイスを一口ぱくり。 そんなマジョリカにキスをすれば、甘くておいしいキャラメル味だ。 「これくらいなら素人だって出せるんだ。アイスの構造は複雑じゃないからね。どのパーツをどれだけ造って、どう組み立てるかさえ覚えてれば誰でもできるよ。アイスを作り出すための電気はそこらじゅうにあるんだし」 簡単に言うけど、本当に自分にできるんだろうか。 ちょっと心配になってきたよ。 「それとさ、さっきウチ【ジャッキーと一緒に食べたい】とか【キャラメルバニラをカップに入れて】とか、わざわざ言葉に出したでしょ? アレが大事なんだ。こうしたい! って思うコトを強く願ってコトバにすれば、それは“言霊”に変化する。その“言霊”が、ウチの頭にあるアイスの設計図を拾って具現化してくれるの。実行コマンドみたいにね。どう? 簡単でしょ?」 う、うん? うん。 オジサン、頑張ってみる。 「実際にやってみれば、こんな感じかって分かると思うんだ。新しくリングを造るんじゃない、リサイズだからリングの構造は知らなくてもなんとかなる。なぜこのリングを直したいのか、それを唱えながら強く願うの。そうすればあとは言霊が発動して願いを叶えてくれるから。ジャッキー頑張れ!」 マジョリカはブカブカのリングを指につけ、自分に向かって差し出した。 マジョリカの指に合うように、合うように、それを強く願えばいいんだな。 よし、やってみよう。 マジョリカの手を取り、目を閉じた。 イメージだ……こういうのはイメージが大事なんだ。 スタントマンだった頃と同じだ。 ビルの屋上からマット目掛けて飛ぶ時も、成功を強くイメージしていた。 「……リングがマジョリカの指に合うように……合うように………………どうだ!?」 目を開けてリングを見るが、変化はない。 変わらずブカブカのままだった。
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