第六章 霊媒師OJT-2

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東京に発つ前の晩。 私は自分の部屋で、次の日の始発電車の時間を調べていました。 内定をもらっていた会社に、就職の辞退と社員寮の入居解約の手続きに行く為です。 本当は電話連絡ですませてしまおうとも思ったのですが、私を面接してくれた社員の方に直接お詫びしたかったのと、せっかくだから東京見物に行こうと計画したからです。 この事は昼のうちに母と相談して決めました。 父はまだ知りません。 仕事から帰ってきたら話すつもりでした。 あれからずっと口をきいてくれないけど、上京しない事にしたと言えば、きっとまた口をきいてくれるはずです。 私はまとめた荷物の横で、父と母に東京土産は何がいいか、東京に行ったらどこから見て回ろうか、そんな事を考えてワクワクしていました。 その時、後ろで部屋の扉が乱暴に開けられました。 振り返るとそこには父が立っていて、私と旅行カバンを交互に見ると、途端に顔を真っ赤にさせていきなり大声で怒鳴ったんです。 「本当に行く気か! そんなに東京が大事か! 俺や母さんよりも大事か! だったらもういい! 始発なんか待ってないで今すぐ出て行け! 二度と帰ってくるな!」 私はびっくりして恐くなって固まってしまいました。 それでもなんとか声を絞り出し、 「ちょっと待って、私の話を聞いて」 「言い訳するな! 行きたいんだろう!? そんな大きな荷物造って! だったら今すぐ出て行け! さあ!」 「だから、待ってよ、お父さん、」 「思い上がるんじゃねぇ! 親元離れて、貴子1人で何ができる!」 「ちがう、私は、」 「言い訳するな!」 「……!」 「貴子!」 「…………」 「貴子! なんとか言え!」 「……うさんは……」 「なんだ! はっきり言え!」 「お父さんは、昔から私を縛りたがるけど、私はもう子供じゃない!」 「なんだと! 生意気言って、あっ! 待て! 貴子! どこに行く!」
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