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東京に発つ前の晩。
私は自分の部屋で、次の日の始発電車の時間を調べていました。
内定をもらっていた会社に、就職の辞退と社員寮の入居解約の手続きに行く為です。
本当は電話連絡ですませてしまおうとも思ったのですが、私を面接してくれた社員の方に直接お詫びしたかったのと、せっかくだから東京見物に行こうと計画したからです。
この事は昼のうちに母と相談して決めました。
父はまだ知りません。
仕事から帰ってきたら話すつもりでした。
あれからずっと口をきいてくれないけど、上京しない事にしたと言えば、きっとまた口をきいてくれるはずです。
私はまとめた荷物の横で、父と母に東京土産は何がいいか、東京に行ったらどこから見て回ろうか、そんな事を考えてワクワクしていました。
その時、後ろで部屋の扉が乱暴に開けられました。
振り返るとそこには父が立っていて、私と旅行カバンを交互に見ると、途端に顔を真っ赤にさせていきなり大声で怒鳴ったんです。
「本当に行く気か! そんなに東京が大事か! 俺や母さんよりも大事か! だったらもういい! 始発なんか待ってないで今すぐ出て行け! 二度と帰ってくるな!」
私はびっくりして恐くなって固まってしまいました。
それでもなんとか声を絞り出し、
「ちょっと待って、私の話を聞いて」
「言い訳するな! 行きたいんだろう!? そんな大きな荷物造って! だったら今すぐ出て行け! さあ!」
「だから、待ってよ、お父さん、」
「思い上がるんじゃねぇ! 親元離れて、貴子1人で何ができる!」
「ちがう、私は、」
「言い訳するな!」
「……!」
「貴子!」
「…………」
「貴子! なんとか言え!」
「……うさんは……」
「なんだ! はっきり言え!」
「お父さんは、昔から私を縛りたがるけど、私はもう子供じゃない!」
「なんだと! 生意気言って、あっ! 待て! 貴子! どこに行く!」
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