第十五章 霊媒師 打ち上げ、そして黄泉の国の話

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◆◆ 果て無く広がる大草原。 夜明けとともに、夜光花が分解された。 薄紫の花びらは風が吹くたび、細かなドットに砕け散らばり、ふわりふわりと舞い上げられる。 数えて8度目の風が吹いた時、地平線は金の色に塗り替えられた。 その線は、瞬くたびに輝きながら溶けだして、白さをもって空の明度を上げていく。 同時、夜光花の砕けたドットは地に還り、そこから新たな緑が芽吹き出していた。 それらの新芽は茎を伸ばし葉を生やし、蕾から開花まで、まるで早送りの動画のように成されていった。 あれは……黄泉の国(ココ)に来て初めて見た花だ。 時間で色を変える不思議な花。 昨日この花が吹雪となって、その中心にマジョリカ立った時、あまりの美しさに言葉を失った。 思えばあの瞬間(とき)から好きになってたのかもしれない。 「百色華(ひゃくしょくか)って言うんだ」 マジョリカが花の名前を教えてくれた。 「百色華(ひゃくしょくか)はね、黄泉の国(ココ)に暮らす死者達の、幸せな気持ちを分けてもらって色づいているんだ。誰かが笑えば花のどれかが赤くなり、誰かが喜べば黄色になる。感動すれば青色に、感謝すれば紫だ。そして誰かが恋をすれば……綺麗なピンクになるんだよ」 そう言ってマジョリカが近くの花に触れると、花びらは優しいピンクに色を変えた。 「ね、」とはにかむマジョリカが愛しくて、その頬に触れ、髪に触れ、唇に触れ、慈しむように、何度も何度もキスをした。 なにがあっても絶対に離れない、そう新たに心に決めていた。
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