第十五章 霊媒師 打ち上げ、そして黄泉の国の話

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「ねぇ、ジャッキー。カンガル族の隣にいる子は【光道(こうどう)開通部】の(おさ)なんだ。ウチらと同じ地球人で、立場はエライ人だけど、ああやって積極的に現場にも出てくれる。厳しいトコもあるけど、普段は優しくて楽しくてプライベートではすごく仲良しなの。お互いの家に泊まったりもしているくらい。ジャッキーに紹介したいから呼んでくるよ。ちょっと待ってて」 マジョリカ……今なんて言った? お互いの家に泊まってる? あの筋骨隆々と一晩同じ部屋にいると言うのか……? ダメだ! それはダメだ! バラカスはなにしてんだよ! 瞬時に頭が沸騰した。 嫉妬でおかしくなりそうだった。 もしかして元カレなのだろうか?  だがマジョリカは言っていた。 黄泉の国(ココ)に来て15年、恋人ができた事は1度もないと。 事情が知りたい。 そう思った時には遅かった。 マジョリカは繋いだ手をスルリと離して走り出し、筋骨野郎の分厚い胸に飛びむと、しがみつくように抱き着いた。 その瞬間、自分も走り出していた。 気安く触るな! 今すぐ離れろ! マジョリカは絶対誰にも渡さない!! 「マジョリカ!」 平らな腹に手を差し入れて抱きかかえ、筋骨野郎からマジョリカを引き剥がした。 身体が浮かび「わぁ」と喜ぶマジョリカは、腰をくの字に折ったまま足をブラブラさせている。 「ジャッキー来てくれたんだ! 紹介するよ! この子は白雪ちゃん。さっき言った通り【光道(こうどう)開通部】の(おさ)で、キャリア3桁超えの大ベテラン。ウチが新人として入った時の教官だったんだ。今は親友なの!」 ん……? 白雪ちゃん? 男で“白雪”? え? 「白雪ちゃん、この人がウチのオットになるジャッキー。また知り合ったばかりだけど、大好きなの。入国手続きが終わったら結婚するんだ!」 何かが変だ……と、さっきまでの怒涛の嫉妬が勢いを失くす。 目の前の筋骨野郎は、身長180cmの自分よりも頭一つ分大きくて、筋肉の瘤が首、肩、腕と見事に配置されて威圧感もハンパない。 だがこの筋骨野郎は、マジョリカの「結婚するんだ!」を聞いた後、 「……結婚? マーちゃんが……結婚……? キャーーー! ステキー!」 と、ガラス細工の鈴の音のような声を上げた。 あれ……? 声が高い……それに喉仏が平坦だ。 白雪ちゃんって……もしかして女性なのか? 「ジャッキーさん、はじめまして! マーちゃんと仲良しの白雪です! 趣味は筋トレと筋トレと筋トレと実践向け格闘技! 結婚!? もうびっくりです! よくバラカスの鉄壁を突破しましたね!」 大興奮で満面の笑みの白雪ちゃんは、グイグイ距離を詰めてくる。 その顔を間近で見れば、なるほど。 夜空を切り取ったような黒い瞳に、通った鼻筋、血のような赤い唇は……マジョリカには負けるが、相当な美人だ。 あまりの筋骨隆々さに、美形男子と勘違いしてしまった。 ははは、そりゃあ、この子と泊まってもバラカスは何も言わない訳だ。 オジサン、早とちりしちゃったよ。 いきなり怒ったりしないで本当に良かった。 危うくマジョリカに嫌われるトコだった。 ★筋骨隆々の白雪ちゃんは、同作者別作【あの女は不死身の化け物か!?】の主人公の白雪姫となります。 白雪ちゃんがまだ小娘で生者だった頃のお話です。 https://estar.jp/creator_tool/novels/24620897
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