第十五章 霊媒師 打ち上げ、そして黄泉の国の話

79/125
前へ
/2550ページ
次へ
床に尻を着けたまま、カンフーパンツの裾を上げ、布の中で外れている義足を取り出した。 そのまま膝上まで捲り上げて、足の切断面にソケットを入れるのだが____ あ……しまった。 自分にとっては慣れた作業と傷跡だ。 だけどマジョリカや白雪ちゃんには刺激が強かったのだろう。 声も出さずに固まって、自分の足を凝視している。 配慮が足らなかった。 どこか別の場所に移ろうと、顔を上げ辺りを見渡すと……なんだ? フロアーにいる半分が自分に注目してる。 立ち振る舞いや雰囲気的に、光る道のオペレーター達のように見えるのだが、どうした? ただの義足にそこまで驚くか? 「……ジャッキ……その足……」 口元を両手で押さえ、身体を震わせたマジョリカが声を掠らせている。 最初こそ固まっていた白雪ちゃんは、口を結び厳しい顔で宙をタップすると、次々に画面を出現させていた。 「マジョリカ、どうした。自分が義足なのは知っているだろう?」 頭のどこかで警鐘が鳴り響いている。 漠然とした不安が濁流のごとく身体を巡り、心臓は五月蠅いくらいに暴れてる。 なんだよ、義足の何が問題なんだ? 「ジャッキ……ウチ……ジャッキと離れたくないよ、」 離れる……? この()は何を言ってるの? 離れる訳がないだろう? こんなに好きで気持ちが通じ合っているというのに。 離れられる訳がない。 結婚すると2人で決めた。 手続きが終わったらバラカスに会いに行く。 大事にしますと土下座して、2~3発殴られたら姫を貰い受けるんだ。 どこかに小さな家を建て、一緒に暮らすと言っただろ。 毎日キスして、毎晩抱き合い、一緒に眠って、一緒に笑って、ピンクの百色華(ひゃくしょくか)を飾るんだ。 1000年経っても離れずに、黄泉の国(ココ)で永遠の愛に生きていく。 なにがあっても離れない、自分の中では百万回も誓ってる。 マジョリカ、自分だけの愛しい女神。 ねぇ、アナタはどうして泣いているの?
/2550ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2366人が本棚に入れています
本棚に追加