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不安は重なるものだ。
ただでさえ、マジョリカの不穏な涙に不安を覚えるというのに……こんな事ってあるのか……?
自分は目を疑った。
この娘の特徴とも言える、髪に輝くすべての星が消えている。
ダイヤやルビーがいつだって煌めいて、時折流星も見えたというのに、今はまるで深い闇だった。
「……マジョリカ、こっちへおいで。泣かないで、なにがそんなに悲しいの?」
急いで義足を装着し、小さな身体を胸の中に抱き寄せた。
温かくて柔らかい身体が震えている。
見上げる顔はグチャグチャに泣いていて、
「……ジャッキ……ジャッキ……好き……大好き……離れたくないよぉ」
と、うわ言のように繰り返す。
「離れないよ、ずっと一緒だと言っただろう?」
泣きじゃくるマジョリカをギュッと抱きしめ、言い聞かせたこの言葉は、きっと自分にも向けていた。
「マーちゃん、」
白雪ちゃんがマジョリカを呼んだ。
その声は鈴の音の繊細さではあるものの、ひどく震えていた。
厳しい顔で口を結び、目は真っ赤になっている。
「……白雪ちゃん、」
「マーちゃん……ごめんね。本当はこんな事言いたくない、」
「ん……」
短く答えたマジョリカは、白雪ちゃんが何を言おうとしてるのか、本当は分かっているのかもしれない。
白雪ちゃんはゴシゴシと目を擦り、自分にもこう声をかけた。
「ジャッキーさんも一緒に聞いてください。……申し訳ありません……ジャッキーさんは入国手続きをする事はできません」
え……?
なんで……?
「白雪ちゃん……それはどういう事なんだ? もしかして審査が間違えていたのか? 本当は地獄に流される人間が間違えて黄泉の国に来てしまったのか?」
足を失ってから家族には本当に迷惑をかけた。
妹の結婚も自分のせいで潰してしまった。
そんな人間は地獄に流されるべきだったのか。
「……いいえ、ジャッキーさんの審査は余裕で通っています」
「ならどうして……!?」
入国出来なかったらどうなるんだ?
いや、どうなってっていい。
マジョリカとさえ離れなければ、後は多くは望まない。
「……マーちゃん、ごめんね……ジャッキーさん、黄泉の国に入れるのは死者だけです。ジャッキーさんは入れません。なぜなら…………貴方はまだ生きているからです」
………………自分が生きてる?
………………そんな今更、
………………嘘だろ?
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