第六章 霊媒師OJT-2

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私は父の怒鳴り声から逃れようと、荷物とコートを掴んで無我夢中で家を飛び出し、真っ暗な田舎道を泣きながら駅に向かって歩きました。 父が私の気持ちを理解してくれない事に失望し、怒鳴られた事にショックを受け、なにもかもどうでもよくなってしまったのです。 誰の為に上京を諦めたと思ってるの? お父さんの為じゃない! あんなに寂しそうな顔で口もきいてくれなくて、そんなお父さんを置いていけないって思ったからなのに! こんな夜中に出て行けなんてひどい……! もう、いい! やっぱりこのまま東京に行って就職する! 社員寮に入る! もう、ここには帰らないから……! あの時。 もう少し冷静になっていれば、母が入浴中でなければ、どうにか上京を諦めていれば、私は殺されなかったのかもしれません。 でもね、後悔はしていないんですよ。 私が東京に行かなかったら、娘は、娘のユリは生まれてこなかったんですから。
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