第十五章 霊媒師 打ち上げ、そして黄泉の国の話

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白雪ちゃんは、何か言いたげに口を開きかけ、それをやめた。 かわりに宙をタップして、昨日マジョリカが出したのと同じ、巨大な黒いDOS画面を出現させる。 ブンっとノイズが走り、その映像はいきなり始まった。 ____ ______ _________ 白い部屋、心電モニターに繋がれた自分が白いベッドに横たわる。 白髪交じりの長髪が、疲れた顔を余計に強調させていた。 そんな自分に縋るように、ベッドの脇に男が一人。 あのスタッフだ。 何年も前の夏、カースタントで爆薬の計量を間違えた____名前は小林。 小林は泣いていた。 自分より10は年下(した)のずなのに、まるで20も年上(うえ)に見えた。 ゲッソリと頬がこけ、顔色が悪く、目の周りは窪んで黒い。 現場で何度か一緒になった時、小林は口数は少なかったものの、いつも笑って感じの良い男だった。 それがこんなにもやつれてる。 『ジャッキーさん……お願いだ……還ってきて……大事な足を奪ったのも……未来を潰したのも……みんな俺だ……まさか……飛び降り自殺をするなんて……そこまで追い詰めたのも俺なんだ……もしもあなたが逝くんなら……必ず後を追いますから……会って直接謝りに逝きますから……』 小林の隣には妹がいた。 今のマジョリカみたいにグチャグチャに泣いている。 『……お兄ちゃん……ごめんね……私……酷い事言った……前に彼氏に振られた時……酔っぱらって帰ってさ……すぐ近くにお兄ちゃんいるの知ってたのに……結婚が駄目になったのはお兄ちゃんのせいだって言ったんだ……小さい声だったけど聞こえてたよね……? お兄ちゃん責めても仕方ないのに……ねぇぇぇ……目ぇ覚ましてよぉぉぉ……ごめんって言えないままぁぁぁ……お別れなんて嫌だよぉぉぉ……』 2人から少し離れた場所には父と母もいた。 母は父の胸で泣いている。 父も母を抱いて泣いていた。 『貞治……ごめんなぁ……お父さんなぁ、お前が出たテレビも映画も見た事がないんだ……大事な息子が危険な目に遭ってるようで怖くて見れなかったんだ……お前が散々努力してたのは知ってたのに……こんな事になるならちゃんと見て、お前を褒めてやればよかったよ……貞治……戻って来てくれ……愛してるんだ、自慢の息子なんだよ……ごめんなぁ、足が無くなって辛かったよなぁ……好きな仕事取り上げられて辛かったよなぁ……就職うまくいかなくて辛かったよなぁ……なのにお父さん……厳しい事ばかり言ってお前を責めたんだ……お父さんの足をあげられたらいいのになぁ……お父さんの命も足もみんなやるからぁ……だから……頼むよ……戻ってきてくれ……』 ____ ______ _________
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