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「………………そうだ、ようやく分かった。
自分はマジョリカに逢うためだけに黄泉の国に来たんだ。
マジョリカを好きになるために、マジョリカに好きになってもらうために、マジョリカと愛し合うために。そして出逢えた、一緒にいれた時間は短くても心は十分通じた、確かめ合った。自分はアナタが好きで……好きで好きで好きで……! ……好きでたまらない、結婚しようと二人で決めた、ずっとずっと一緒にいたい。
それを……本気で実現させるには……今は……耐えなければいけない事がある、」
本当は一瞬だって離れたくない。
引き裂く距離が怖かった。
だがそうじゃない。
今ここで離れる事は、もっと先の未来に繋がるんだ。
どうしようもなく惹かれ合い、狂ったように抱き合って、身体の熱が一時引いても心の熱はそのままだった。
それぞれだった二つの心臓は一つになった。
どんなに離れていても同じ鼓動を刻むんだ。
一歩、足が自然と前に出た。
カツンと床を蹴る音がして、マジョリカも前に出る。
「マジョリカに逢えたから、」
「ジャッキに逢えたから、」
一人じゃきっと耐えられない、だけど二人なら乗り越えられる。
そうだ、一人じゃないんだよ。
二人は出逢った。
現世と黄泉にわかれても、マジョリカの存在は自分を支え、自分の存在はマジョリカを支える。
恐れる事は何もない。
「もう大丈夫だっ! 自分は現世に戻る! そして必ずマジョリカの元に帰ってくる!」
「うん!」
抱きしめたい、
数歩の距離がもどかしく、走り出したのは二人同時だった。
「ジャッキッ!」
自分の名前を呼んだ瞬間。
マジョリカは猫科動物のようにしなやかに、踏み出す脚で大きく飛んだ。
「マジョリカ!」
無茶するな……!
受け止めようと見上げると、笑顔で広げた両腕が、まるで大きな翼に見えた。
…………
………………
ああ……綺麗だ。
マジョリカ……アナタは本物の女神さまだったんだな。
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