第十五章 霊媒師 打ち上げ、そして黄泉の国の話

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「そいつらのどこが気に入らなかったかって? そりゃ色々だ。マジョリカに優しさが足りねぇ奴、マジョリカの身体ばっかり見てる奴、マジョリカの気持ちを考えねぇ奴、その辺は論外だ。あとはそうだな、どうしても親指の形が気に入らねぇとかもあったな」 「バラカス、待てよ……親指の形が気に入らないって、それは言いがかりに近くないか?」 「ケッ! マジョリカは気にしてなかったみてぇだが、俺が嫌だったんだよ! いいじゃねぇか、俺が潰してなけりゃ、今頃人妻だったかもしれねぇんだからよ。そしたらジャッキーなんか目も合わせてくれなかったぞ? 感謝しろ、クソが」 口悪……だが感謝はする。 「で、じゃあなんでジャッキーは潰さなかったかって聞きたいんだろ?」 爪を鳴らして大量の笹を出したバラカスは、自分にも1本差し出しながら、モシャモシャと食べ始めた。 続けて3本平らげたところで、いきなりこう切り出した。 「オマエ、マジョリカに会ってすぐ鼻血出したろ?」 「あ、あれは! あんなに綺麗な女の子が半裸みたいな恰好でびっくりしたんだよ! 誰だってそうなるさ!」 「いや、ならねぇよ、さすがに。鼻血はねぇわ」 「ぐぬぅ……」 「で、その後、テメェのきったねぇTシャツ脱いでマジョリカに着せようとしたよな?」 「あー、汗臭そうってイヤがられたけどね」 「たいていの男はな、特にヒト族は、半裸みたいなマジョリカを盗み見するんだ。見てない振りしてガッツリ見てる。間違っても肌を隠そうなんてしねぇよ」 「……それだけか? そんな理由で自分を潰さなかったのか?」 「いや、それはオマケみたいなもんだ。一番の理由は、マジョリカの髪の流星だ。アレの髪は本物の宇宙とリンクしてる。あの星達は実際の宇宙空間がそのまま映ってんだ。俺はこの15年、髪に流星を見るたびにマジョリカの幸せを願ってきたが、星は早くてまず願い事を言い切れねぇ」 「分かるよ、自分も昨日の夜、何度星に願ったか。一瞬で消えるから間に合うハズがない。星は願いを叶える気なんてないんじゃないかと思うよ」 「ケケケッ! 甘いな、ジャッキー。叶える気はあるんだよ、ただ滅多には叶えねぇ。叶える時は、星の動きが変わるんだ。ゆっくり流れて言い終えるまで待っててくれる。俺はこの15年間、毎日毎晩見つけるたびに願ってた。いつもは間に合わねぇ、だが昨日は違った。星に願いを口にした途端、星が滞空し始めたんだ。言い終わるまで待っててくれた。願って実に20136回目の星たっだ。昨日、大草原で俺とマジョリカとジャッキーと3人でいた時だ」 「…………あ、そう言えば、」 確かにバラカスは祈ってた。 髪の流星を見るたびに、モフモフの両手を合わせていたのを見た。 あれはマジョリカの幸せを祈っていたのか。 地道にコツコツ15年間祈り続けて、20136回目で願いが届いたんだ。 「嬉しかったねぇ。だが同時に本気か? とも思ったぜ。マジョリカに幸せをと言った後、試しに、それはこの男がもたらすかって聞いたんだ。そしたらビカビカに輝き出した。星は嘘をつかねぇ。だから潰さなかったんだ」
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