第十五章 霊媒師 打ち上げ、そして黄泉の国の話

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さっき出した残りだろうか? バラカスはタバコを取り出し火を着けた。 吸うか? と言われたが丁重に断った。 タバコは随分前にやめたんだ。 「本当はな、最初から知ってたんだ。ジャッキーがまだ生きてるって事をよ。すぐに教えてやろうとしたんだが、鼻血を見てやめた。コイツ面白れぇなって思って」 プパァーっと丸く煙を吐いて、悪い顔で笑ってみせる。 分かってたって、どうして? 「まずな、オマエ黄泉の国(ココ)に来た時、俺の腹の上に落ちてきたろ? そん時の感触で分かったよ。膝から下がやけに固いが、手や胴体はそうでもねぇ。使ってる言語から地球人だと思ったが、地球のヒト族は足に硬化はないはずだ。てことはなんらか事情があって義足かと思ったし、その後、オマエを掴んでグルグル見てみたがやっぱり足以外は硬くねぇ。それで分かったんだよ」 「スゴイなバラカス、名推理」 「まぁな、もっと褒めろ。ちなみにな、俺が勝手に調べた事だが、地球に残された肉体のジャッキーが蘇生したのは、一度死んでから5時間23分後だ」 「…………5時間23分後(・・・・・・・)に蘇生したのか? ……嘘だろ?」 「本当だ。ジャッキーが黄泉の国に着いたのが、死んでから5時間22分後。蘇生したのがその1分後だ。正確には1分切ってんだろな。その数字見てよ、こりゃあ、本当にマジョリカを幸せにする男かもしれなぇと思って、義足の事も生きてる事も誰にも言わなかったんだ。いつまでも魂が戻らなきゃ、いずれ肉体は死ぬからな。 なのに……クソが! 余計な事しやがって、あのガンガル族! 今度会ったらぶん殴ってやる! ま、白雪の映像見ちまった今となっちゃ、これで良かったのかもしれねぇけどよ」 本当にギリギリだったんだ。 走り続けた事もそうだが、最後の最後、黄泉の国(ココ)に着いた上空で、光る道を滑り台よろしく降りてなければ、間に合わなかったかもしれない。 間に合わなければ出逢えなかった。 自分とマジョリカ。 どうにも抗えない不思議な縁を感じずにはいられなかった。
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