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「ま、与太話はこれで終わりだ。研究所に連れてきたのは、お前が現世に戻っても、ある程度困らないようにいくつか渡したいモノがあってな」
古タイヤから立ち上がり、着いて来いと歩き出したバラカスの後を追う。
巨大パンダの足で十数歩、横開きの扉を開けたその先は、今いた体育館よりも更に広い空間があった。
まず目に入るのが、地球のワンボックスカーを縦にしたような立方体。
これが延々、ズラリと並び、その終点が見えてこない。
立方体の表面は、複数ある丸いランプが光ってて、個々にそれぞれ点灯と点滅をランダムに繰り返している。
雰囲気としては地球でよく見るパソコンだ。
だが、これだけの台数が並んでいると、どこか大きな会社のサーバー室に迷い込んだと言った方がしっくりくるかもしれない(それにしたってデカすぎるし数も多いが)。
後ろを向いた丸い背中に丸い尻。
その尻には、ホワホワの白い尻尾が付いている。
パンダの尻尾って黒じゃないんだな、などと思いながら「バラカス、これは?」と声を掛けると、
「サーバーだ。しかもここにあるのは全台黄泉の国の公式機。パワー気取りのハンパなエンジニアが造ったものとは訳が違う。サーバーは第1から第9999まで、イチから俺だけで造ったんだ。定期メンテもなにもかも俺が面倒見てるから、いつだって絶好調。特に1号機から99号機のスペックは神レベルだ」
やっぱりサーバーだったのか。
しかし9999台もバラカスだけで造り管理もするとは、とてつもないスキルと労力がいる。
「バラカスやるなぁ…… で、1号機から99号機のスペックが特別高いって言うのは、なにか理由があるのか? ああ、そうか。無敗のシステムを支える為だな?」
当然、肯定の答えが返って来ると思っていたのに、
「いや、途中で飽きたんだ。だから100号機からは神レベルから仙人レベルに抑えてある。どうせ他のヤツらにゃ分かりゃしねぇし。なんでそんな事したかって? だって考えてみろよ、普通イチパンダだけで9999台も造らせるか? 馬鹿じゃねぇかって思うだろ? ま、でもそれがよ、俺が黄泉の国の住人になる為に出された条件だったから、やるしかなかったんだけどよ」
「黄泉の国の住人になる条件? そんなモンがあったのか? 自分は特に条件は無かったみたいだが、」
自分の入国審査については「ジャッキーさんの審査は余裕で通っています」と、白雪ちゃんが言っていた。
さすがに自分が特別善人だとは思わない。
ボランティアに参加した事は1度もないし、自分を守る為のウソだってついた事がある。
進んで人を傷つけようとはしなかっただけで、家族に迷惑をかけ、小林にも感情のまま辛くあたった。
それでも審査のみの無条件で通ったのだ。
「あぁ、俺はギリギリで審査に落ちたんだよ。本当なら地獄流しのはずだった。だがな芸は身を助けるじゃねぇが、スキルを買われてよ、9999台のサーバー構築と、黄泉の国に大きく貢献するナニカを造れば永住権をくれるって言われたんだ。それで瞬時翻訳システムを造ったんだわ。それまで黄泉の国では、個人で持つ携帯型の翻訳機が主流だったからな、どいつもこいつも驚いてたよ。ケケケッ! まったくチョロイぜ!」
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