第十五章 霊媒師 打ち上げ、そして黄泉の国の話

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ギリギリ審査落ち……コイツは一体、生前にナニをやらかしたんだ? 思えばバラカスは、黄泉の国(ココ)の住人達とは毛色が少し違う。 自分が生きている事も隠蔽したし、バレた時には不正を承知で「置いてやれ」と言っていた。 ま、生前がどんなヤツだろうと、自分にとってはどうでもいい話だ。 コイツはマジョリカを心から愛しているしマジョリカを大切にしてくれる、それに自分を庇ってくれた、それだけで充分だ。 「スキルが高くて良かったなぁ。地獄流しにされてたら、俺達は出会えなかったんだし」 片目をつむりおどけて言うと、 「ケッ! どうせならスーパーセクシーなパンダ姫と出逢いたかったぜ!」 と悪態をついた。 そして、 「マジョリカと結婚するなら、お前は俺の息子になる。俺達はファミリーだ。親は子供の為ならなんだってするもんさ。さあ、一つ目のギフトはコレだ!」 巨大パンダの息子扱いに、くすぐったい気持になった。 そんな黄泉の親父が指をさしたのは、数あるサーバーのうちの1台だった。 「第98号機、スペック神レベルの自慢のサーバーだ。これをジャッキーの専用機にする。当然、現世からもアクセス可能だ。黄泉の国(ココ)での霊力(ちから)現世(むこう)で使う事が出来る。さっそく権限を付けるからお前は好きなユーザー名とパスワードを今すぐ考えろ。ただしマジョリカの名前が入ったものはダメだ。すでに俺が使ってる」 どんだけマジョリカが好きなんだ、このパンダは。 「二つ目のギフトは”目”だ。現世に彷徨う霊の姿がいつでも視えるようにする。お前、廃ビルで性質(タチ)の悪い奴らに絡まれただろ? 現世に戻ってまた絡まれたらたまらんからな」 言うや否や、爪を弾いて出現させた拳銃を続けざまに二発、自分の両眼に発砲した。 「うわっ!! なにするんだよ!!」 慌てて顔を押さえて蹲るも、痛くはないし、ケガもない。 確かに撃たれたはずなのに。 「そんなに騒ぐな。こりゃあ普通の銃じゃねぇ、俺が造った霊銃で五感を強化する。ビジュアルモデルはイタリアのベレッタ92、初期の量産型だ。イカすだろ? コイツは弾の代わりに霊弾を込めてあるからな、これでお前の目は生者と死者がキッチリ区別がつくようになった。誰かに会ったら、まず頭の上を視ろ。なにもなければ生者だが、丸い玉があればソイツは死者だ。ついでに玉の色を視れば霊の感情も分かる。通常時は青、負の方向に向けば向くほど濁って黒くなる。いいか? 玉を視て真っ黒な奴がいたら逃げろ。それは凶悪な悪霊だ。決して立ち向かおうとするな」 「……分かった。全力で逃げるよ。なぁ、ひとつ聞いてもいいか? 自分は廃ビルで地縛霊に絡まれた。元々霊感なんてないのに、なんで視えたんだろう? バラカス、分かるか?」 バラカスならなんでも答えてくれるような気がした。 今まで1度だって幽霊を視た事はない、金縛りさえあった事がない。 それなのに何故視えて、会話もできたのだろうか? 「そりゃ、そこが濃かったんだろうな」 「濃い?」 「そうだ。悪霊でも善霊でも、やたらと気持ちの強い奴がいるんだよ。強い恨み辛み、もしくは強い信念や想いだ。霊の身体は電気信号の集合体だろ? それは現世でも変わらない。なんらかの“気持ち”が強いと、それを燃料に霊の持つ電気が増量し辺りに飛散する。1日や2日飛散したくらいじゃ何の影響もないが、それが1年2年と月日が長くなる程、蓄積される。そうなるとその土地や建物は電気濃度が高まった霊地帯となるんだわ。そういう場所に生者が入るとな、たとえその生者に霊感が無くても、死者を視る為の力をその土地が補っちまう。ジャッキーが廃ビルで地縛霊を視ちまったのも、そういった理由だ」
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