2366人が本棚に入れています
本棚に追加
そういう場所では霊感の有無は関係なくなるのか。
その土地の力が視せてしまうという事だ。
自分は視せられてしまったんだな。
「悪霊はな、最初は優しく近づいてくるんだよ。だから油断するな、とにかく頭上を視ろ、玉の色を視ろ。分かったな。んじゃ、次は三つ目のギフトだ!」
バラカスは両手の爪を重ねるように弾くと、キラキラ輝く胡桃大の宝石を出現させた。
金色透明で強い光を放っているそれは、大きなダイヤモンドのように見えたが、輝きはLEDのようだった。
「随分と綺麗な宝石だな。これだけで地球なら一生遊んで暮らせそうだ。バラカス……これはいらないよ。こんなに綺麗な宝石なんだ。マジョリカにやってくれ。きっとあの娘が着けたら似合うだろうから」
宝石をあげた時のマジョリカの喜ぶ顔が浮かぶようだった。
確かに、宝石があれば現世に戻って生活に困る事はないだろう。
だけどマジョリカのはしゃぐ顔の方が、自分にとっては価値がある。
それに……今度こそちゃんと就職をしようと思っているんだ。
次にマジョリカに逢えた時、恥ずかしくない自分になりたいじゃない。
こんなに高価な宝石を持っていたら、ついつい甘えてしまうかもしれない。
だから必要ないんだよ。
「ケケケッ! よっぽどマジョリカが好きなんだなぁ! だが、宝石はアレにはやらねぇよ。オマエへのギフトだからな、」
「バラカス……気持ちは嬉しいが、自分は」
いらないよ、と言おうとした自分を遮ったバラカスは訳の分からない事を言い出した。
「呑め、」
「はい?」
「だから、宝石を吞めって言ったんだ」
「バラカス……馬鹿なの?」
「馬鹿って言うなボケが! こりゃ硬いからよ、噛んで食うのは不可能だ。だから吞めって言ったんだ。思いやりだ、クソが!」
最初のコメントを投稿しよう!