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「自分こそすまない。もう大丈夫だ。なに、地球のヒト族が所有する命は1つだけ。そう時間はかからず戻って来れるはずだ。それまでの辛抱だと思って頑張るよ」
少し落ち着いた。
そうだよ、淋しいのは自分だけじゃないんだから。
バラカスはそんな自分の様子を見て、少し笑い、そしてこう聞いてきた。
「ジャッキー、音声通信の使い方だがな、本当に呼びかけるだけなんだ。オマエ……言霊って分かるか? チッ、分かんねぇよなぁ」
そこから説明か、と面倒くさそうなバラカスに、言霊は理解している事を告げる。
「いや、分かるぞ。昨日マジョリカに教えてもらった。言霊を使ってリングのサイズ直しをしたんだ」
「そうか! それなら話が早い。『マジョリカと話がしたい』と強く願って“コトバ”にすれば、それは言霊になる。その言霊が、さっきジャッキーが呑み込んだ宝石に地球と黄泉を繋げと命令を出すんだ。繋がりゃ後は好きなだけ話をすればいい」
「地球から音声回線を繋げるのは分かった。言霊で実行すれば良いんだよな。じゃあ話す聞くはどうするんだ? 専用インカムでもつけるのか?」
「んなモンねぇよ。あったとしても黄泉と地球の規格の異なった端末に互換性はねぇだろ? 話をする時は普通に喋ればいい。発した言葉は繋がった線に乗って黄泉と地球を行き来する。ただ最初は、相手の声を聞く時に少し違和感があるかもしれない。聞くのは耳じゃない、頭ん中に直接入ってくるんだ」
なるほどね、脳内に直接声が。
ソッチのタイプか。
ええ、ええ、分かります。
オタクの間ではそんなの珍しくもなんともないですから。
とはバラカスに言わないけどさ。
「理屈は分かったよ。しかしそうなると、あの宝石を無理に呑み込む必要あった? 宝石をそのまま現世に持っていけばいいじゃない」
「そりゃ無理だ。あのまま現世に持ってったら、48時間で消えちまう。現世に持ち込んでも消滅させない為には、宝石を保護してやるしかねぇ」
「じゃあ、さっき吞ませたのは、自分の身体を宝石の保護ケースにする為ってコト?」
「そうだ。今のジャッキーの身体は、生者でありながら黄泉の国にいる間限定で霊体だ。霊体のうちに宝石を吞んでおけば魂と癒着する。そうなりゃ保護ケースというより、ジャッキーそのものが宝石になったのに近くなる。その状態で現世に戻れば、宝石はオマエの魂に守られて消滅しない。これで黄泉の国とコンタクトが取れる。
ちなみにな、さっきから宝石宝石言ってるが、ありゃ石じゃねぇ。光る道の欠片だ。星と星を繋ぐにはもってこいの素材だろ?」
宝石じゃなかったんだな。
光る道の欠片……確かにコレなら黄泉と地球を結ぶコトが出来る。
自分とマジョリカを、そして黄泉の国と繋いでくれる大事な回線だ。
「これで全部だ! この三つのギフトをうまく使って乗り切ってくれ!
いいか、ジャッキー。現世にも立派な父親がいるんだろうが、黄泉では俺がお前の父親だ。マジョリカは娘で、お前は息子で、俺達はファミリーだ。なんか困った事があったらすぐに連絡しろ。分かったな?」
バラカスがそう言った次の瞬間、身体が宙に浮き、自分はモフモフの胸に抱きしめられていた。
そこは温かくて柔らかくて、絶対に守ってもらえるという安心感を与えてくれた。
「バラカス……ありがとう。自分、現世で頑張ってくる。寿命を全うしたら、必ず二人の元に帰ってくるから。マジョリカをよろしくな」
ああ、と短く答えたバラカスからは、事故以来止めて久しいタバコの匂いがほんのりと漂っていた。
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