第十五章 霊媒師 打ち上げ、そして黄泉の国の話

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◆◆ 「ジャッキ……バラカス……そっちにいるのか?」 隣の部屋から自分達を呼ぶ、マジョリカの声が聞こえてきた。 元気はなく、迷子の幼子のようなか細い声だ。 あんな声を聞いてしまうと居ても立っても居られなく、すぐに愛しい妻を迎えようとしたその時、バラカスが言った。 「俺は先に【光道(こうどう)開通部】に行くわ。さっきは白雪に散々キツイ事言っちまったからな。光る道の欠片をくすねたのも黙っててくれたのに、ちっとばかし言い過ぎた。機嫌を取っておかないと後がコワイ。ジャッキーは後からマジョリカと一緒に来い。じゃあな、______光道(こうどう)開通部へ」 返事も待たずに瞬間移動を発動させたバラカスは、研究所から姿を消した。 「ジャッキ……? バラカス……? どこ……?」 泣き出しそうなマジョリカの声に胸が締め付けられる。 早くここにいると伝えたくて、小走りになる。 「マジョリカ、ここだ、」 サーバー室から、開けたままになっている横開きのドアを抜けて隣の部屋に行くと、自分を見つけたマジョリカが「ジャッキ、いた」と嬉しそうに笑った。 「バラカスは?」 そう言いながらマジョリカはヒールの靴を脱いだ。 芝生の上では歩きにくいのだろう。 「先に【光道(こうどう)開通部】に行くって。白雪ちゃんに謝りたいって言ってた」 バラカスのいない研究所はやけに広く感じた。 マジョリカと自分はお互いの姿を焼き付けるように、ゆっくりと歩きながら近づいていく。 「そっか。バラカス、口は悪いけど本当は優しいんだ」 「うん、さっき分かった。アイツに『マジョリカと結婚するならオマエは俺の息子だ』って言われたよ」 自分がそう言うと、マジョリカは少し驚いた顔をして、そして嬉しそうに笑った。 「バラカス、結婚許してくれたんだね」 「ああ、俺達三人はファミリーだって言ってた」 「あはは、バラカスがそんなコト言うなんて信じられない。ウチに近づく男はみんな追い払ってたのに……ジャッキは特別なんだね。ウチの特別だからかな?」 えへへ、と笑うマジョリカの二色の瞳にみるみる涙が溜まり、慌てたように後ろを向いて立ち止まる。 「マジョリカ……」 震える後ろ姿が頼りなくて、愛しさと切なさが込み上げる。 強くしたら壊れてしまいそうで、後ろからそっと包むように背中を抱いた。
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