第十五章 霊媒師 打ち上げ、そして黄泉の国の話

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「ジャッキ……あのね、白雪ちゃんがね、生者の為の光る道を造るには時間がかかるから、連絡するまでウチと待っててだって、」 「そっか。じゃあ、それまでココにいよう」 二人とも分かっていた。 それが白雪ちゃんのついた優しいウソだって事を。 開通部キャリア3桁超えの(おさ)が、手間取る作業じゃない。 「やっぱり白雪ちゃんは優しいな、」 小さく呟き二人で芝生の上に腰を下ろすと、マジョリカはゴソゴソと、自分の胡坐の中に対面で滑り込んできた。 向かい合った体勢は互いの体温で温かく、そしてマジョリカの長い脚は、自分の腰でクロスに絡む。 「マジョは甘えん坊だ」 「ん、」 短く答えて自分の胸に顔を埋め、愛しいマジョリカは小さな声で話始めた。 「……頭ではね、分かってるんだ。ジャッキと離れても、またいつか帰ってくるって。その後はずっと一緒にいれるんだって……でもね、やっぱりちょっと淋しくて……ああ、もう、さっきはウチ、ダイジョブだって言ったのに……カッコ悪いなぁ」 カンフーシャツの胸元を、小さな両手でギュッと握るマジョリカは、時折おでこを擦り付けてくる。 そんな子供のような仕草が愛おしくてたまらない。 「自分もね、さっきバラカスの前で泣いたよ」 「ウソ……!」 「本当。ははは、自分もカッコ悪いよ。なんだか似た者夫婦だな」 ”似た者夫婦” 何の気なしに出した言葉だったが、”夫婦”という単語に二人で顔を見合わせて、同時に顔を赤くした。 「そっか、ウチとジャッキは夫婦なんだね」 「そうだ、夫婦だ。なんか照れてしまう。でもね、すごく嬉しいよ。すごく幸せだ」 二人して笑ってしまい、そしてキスをした。 「地球人の命は1つだけだ。しかも自分はもう40だし、そう長くは待たせないよ」 コツンとおでこをぶつけ合う。 マジョリカの鼻に自分の鼻をくっつける。 「まだ40だよ、きっと長生きする。淋しいけど……せっかく現世に戻るんだもん。ジャッキの家族を安心させてあげてほしい。ジャッキの好きな事いっぱいしてきてほしい。なにしてもいいよ、でも浮気はヤダ……」 息が触れ合う至近距離、ジト目で自分を見つめてる。 この()はなにを言ってるの? 浮気なんてするはずないよ。 アナタ以上の女はいない。 なにを心配してるんだろう? 自分はもうオジサンで、これが最後の恋だというのに。 「浮気なんてしないよ。……ん? 心配?」 情けない顔で「うぅ」と唸る愛しい妻にキスをした。 広すぎる研究所にかすかな水音が響く。 心配する事は何もないのだと、どうすれば分かってもらえるのだろう? ……あ、 「あのね、バラカスがね、黄泉の国(ココ)と現世を繋いで、自分とマジョリカで話が出来るようにしてくれたんだ。離れていも声は聴けるの。毎日毎晩話をしよう、その日あった事を報告し合おう。マジョリカが安心して眠れるまでいつまでも付き合うよ」 自分がこう言うと「ホントか!」と二色の瞳をキラキラさせてマジョリカは笑う。 表情がコロコロ変わり見てて飽きない。 ああ、大好きだ。
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