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「うぅ」と謎に唸って、自分の胸に顔を隠すマジョリカは、なにやら言いにくそうにモゾモゾしてる。
なんだ、どうした?
「……ん? マジョリカ? 言いにくいコトなの?」
「そんなコトないけど……」
「ダイジョウブなら教えて? マジョが思うコトなら何でも知りたいよ」
愛しい妻の髪に何度も何度もキスをした。
この優しくて甘い香りを絶対に忘れないと心に誓う。
「あのね、昨日ね、」
「うん」
「草原にいた時にね。ウチ、ジャッキを困らせたでしょ?」
「……? マジョはずっといい子だよ? 自分は困ったりしてないよ?」
「ホントか……? でも1回だけあったよ。昨日、ウチの年を言った時。ジャッキはさ、17才は恋愛対象じゃないって言ったのに、ウチ、その時はもうジャッキが大好きで諦められなくてさ……ジャッキは優しいから17のウチを受け入れてくれたでしょ。それがすごく嬉しくて、もっと好きになっちゃったんだ。ジャッキの好きを超えちゃうくらいにね」
二色の瞳に涙を溜めて、えへへと笑うマジョリカが健気で愛しくて、同時に昨日の自分を殴りたい気持ちになった。
「マジョリカ、ごめん。違うんだ、ああ、でもそうだよな。誤解させたままだった。自分が悪い、許してくれ。確かに他の17才は恋愛対象にはならないよ。だけどマジョリカは特別だ。アナタがいくつだろうと大好きだ。昨日ああ言ったのはアナタを傷つけたくなかっただけなんだ。すぐにでも抱きたい気持ちを抑える為についた嘘で、本心は違ってたんだよ」
この娘は素直だ。
自分なんかの言葉を、疑う事なく受け止め信じてくれるんだ。
まるで真面目な生徒のように、真っ直ぐ自分を見つめてくれる。
ああ、もう。
好きで好きでたまらないと思っていたけど、そんなもんじゃすまないよ。
「違うの?」と、自分を見上げるマジョリカの頬を両手で包みキスをした。
「違うよ。ごめんね、不安にさせたままだったんだね。マジョリカ、誓うよ。もう二度と嘘はつかない。昨日の嘘が最初で最後だ。優しくて素直なマジョリカ……ねぇ、知ってる? 今、アナタを想う気持ちは好きなんてもんじゃない。……愛してる、どうしようもなく愛してるよ」
少しだけ恥ずかしい。
愛してるなんて、今の今まで誰にも言った事がない。
数瞬の間を置いて、マジョリカは声を上げて泣き出した。
その泣き顔も焼き付けたくて、しばらくそのまま眺めていると、黒髪の星達がローズピンクに輝き出した。
ああ、そうか。
この色の意味するものは、今の自分の気持ちと一緒なんだ。
強い恋心が確固たる愛に変わった証。
それに気付いた時、不意に手の中の泣き顔が滲むように歪みだした。
自分も泣いているのだと気が付いたのは、それから少し後の事だった。
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