第十五章 霊媒師 打ち上げ、そして黄泉の国の話

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ずっとキスをしていた。 重ねた唇は溶けきって、甘い吐息と息遣いが混ざり合う。 途中、愛を囁く言葉でさえ、互いの唇は掠るように離さずに、ゼロ距離の中で紡ぎ合っていた。 そんな蜜刻をジャマする輩が一人。 研究所の外から、なにやら甲高い声が聞こえてきた。 「チーフー! マジョリカチーフー! ここにいますかー? おじゃまして本っっっ当にゴメンナサーイ! じゅぶん(・・・・)ですー! ヤマネですー! 白雪(おさ)に言われてお迎えに来ましたー!」 声の感じは小さな女の子のような幼さで、”じゅぶん(・・・・)”と言っていたけど、もしかして”自分”と言いたいのだろうか? 「あ……ヤマちゃんだ。ジャッキ、あのね、外に来てる子は【光道(こうどう)開通部】の同じオペレーターなんだ。ヤマちゃん、迎えに来たって言ってたよね……そっか、もう時間になっちゃったんだ」 二色の瞳に涙を溜めて、ギュッと自分にしがみつくマジョリカに「あと1分だけ」と呟いて、長く激しいキスをした。 外からは、相変わらずヤマちゃんの甲高い声が聞こえてくる。 身を切るような辛さを捩じ伏せ、なんとか唇を離した瞬間、マジョリカが再び唇を押し付けてきた。 「ジャッキ……ウチも愛してる……すごくすごく愛してる……」 ああ、マジョリカ。 アナタを現世に連れていけたらいいのに。 だけどそれは叶わない。 二人はしばらく見つめ合い、もう一度だけと唇を重ねた。 マジョリカを”チーフ”と呼ぶヤマネさん、通称”ヤマちゃん”は、バニー星のウサギ族で、研究所のドアを開けると、申し訳なさそうな顔をして立っていた。 ちんまり小柄なウサギ族は二足歩行で、身長はマジョリカの腰のあたりまでしかない。 カフェオレ色のフワフワ毛並みと長い耳が特徴的な、可愛らしいウサギちゃん……なのだが、せっかくのプリティさをぶち壊す変なアイテムを装備していた。 ヤマちゃんは頭にカチューシャを着けているのだが、そこには引く程リアルな造りの人間の耳が接着されていて……要は頭の真上に自前のウサ耳が、その少し下には完成度の高すぎるフェイク人耳が着いているのだ。 耳は全部で4つ、どうにも不気味なビジュアルだ。 ヤマちゃん曰く、 「ヒト族も、萌え~とか言って、”ウサ耳カチューシャ”着けるでしょ! ウサギ族もおんなじ! 萌えのココロで”ヒト耳カチューシャ”着けるんです! これはオシャレです!」 なんだそうだ。 タシタシ足を踏み鳴らしつつ力説してるのだが……なんだろう? この緊張感の無さは。 ついでにこうも言っていた。 「さっき、センターでお二人を見ました! 本物の愛にものごっつ感動したです! もうボロボロに泣いちゃいました! お二人は、じゅぶん(・・・・)の憧れです! とぅるーらぶです! 全力で応援します!」 あぁ、思い出した。 そうそう確かにいたぞ。 顔は見なかったけど、フロアで誰か泣いていたわ。 あれヤマちゃんだったんかい。
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