第六章 霊媒師OJT-2

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あれは僕の度を越した想像なのだろうか? 僕はそれを確かめる為、田所さんにいくつか質問を投げかけた。 「あの……お話を進めてもらう前に聞いておきたい事があります。田所さんのお父さんは、がっしりした体型の白髪交じりの方ですか? 背がこのくらいで、こんな感じで……」 僕が手振り身振りでお父さんの容姿について質問すると、きょとんとした雰囲気でこう答えてくれた。 『え? あ、はい。そんな感じです。でも身体は人より大きいけど、あとはどこにでもいる普通のおじさんって感じですけどね』 やっぱり……あれは田所さんのお父さんだったんだ。 それなら、 「お母さんは……青地に白い花が描かれた……花の名前はわからないけど、そんな模様のエプロンをしてキッチンに立っていませんでした? 髪をこう後ろで1つに結んで、背は低くて、このくらいで……」 今度は具体的に、身に着けていたエプロンの色やデザインの事も聞いてみる。 すると田所さんは息を呑み込んで、 『……え? そうです! 母は誕生日に私がプレゼントした青いエプロンをいつもつけていました。花は母の好きな鈴蘭が描かれていて、田舎の町だから探すのが大変だったんです! でも岡村さん、どうしてそれを知っているんですか?』 やっぱりそうか……ほぼ確信が持てた。 次の質問で最後だ。 これが合致すれば、僕の見た映像は間違いなく田所さんの過去だろう。 僕はきっと彼女を霊視……したんだと思う。 意図なく視えてしまったものだから、改めて誰かを霊視しろと言われたら多分できなだろうけど、さっきのはなんらか波長が合って視えたのかもしれない。 「田所さん、あなたはあの頃、肩までのきれいな黒い髪で、透明感のある白い肌、桃みたいな薄いピンク色の頬に、まるで外国のお人形さんのような整った目鼻立ち。テレビに出ている下手なアイドルなんか霞んでしまいそうなキレイな女の子でしたよね?」 僕は懸命に思い出しながら視たままを伝えた。 これに対する答えが肯定なら疑う余地はない。 偶然とはいえ霊視を成功させたと言って良いだろう。 新しいスキル習得だ。 お給料の査定にいい影響がでるだろうか? さあ、答えてください、田所さん!
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