第十五章 霊媒師 打ち上げ、そして黄泉の国の話

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◆◆ 【光道(こうどう)開通部】までは、研究所敷地内にポツンとあった陣を使って移動した。 基本的にバラカスは陣を利用しない。 主に瞬間移動を使うのだが、敷地内の陣はマジョリカの為だけに設置したものらしい。 バラカスにとって、それだけマジョリカは大切な存在なのだ。 アイツも自分と良い勝負のマジョリカ好きの変態だ。 自分がいなくなってもバラカスがいれば安心できる。 「ここがマジョリカの職場……立派なビルだな……」 それは超高層な建物だった。 一体何階建てなのだろうか? 首が痛くなる程見上げても、てっぺんは雲の中に隠れて見る事が出来ない。 「ジャッキーさん! じゅぶん(・・・・)達、一般オペレーターは105階から下の階で仕事してるです!  チーフより上の役職は106階から上! マジョリカチーフは108階にデスクがあるですよ! チーフは大変なんです! 現場も行くし、一般オペレーターが作っちゃったクレーム処理もするですよ。じゅぶん(・・・・)……この間、入国したてのタヌキ族を怒らせちゃってチーフに助けてもらったですよ……感謝してますの……」 ヤマちゃんは長い耳をシオシオにさせて「あの時はゴメンナサイ」と謝っている。 そんなヤマちゃんの頭をモフモフと撫ぜるマジョリカは、「いつでも呼んで! それがウチの仕事だもん!」とニコニコ笑っていた。 それは二人でいる時の、甘えてグズグズになるマジョリカとは別人のようだった。 そう……昨日、マジョリカは言っていた。 ____もう後悔はしたくない、だからオペレーターの仕事を頑張るの、 と。 マジョリカにとってのオペレーターの仕事は、自分のスタントマンの仕事と同じくらい大切なものなのだろう。 こうしてマジョリカの仕事場に来て、チーフとして頼られている姿を見ると、不正なんかさせなくて良かったと改めて思う。 この()が積み上げてきた努力、キャリア、プライドは、マジョリカだけの大事なもので、たとえ夫でもそれを壊してはいけないんだ。 融通のきかない悪者になってまで、マジョリカに不正をさせまいとしていた白雪ちゃん。 今ならその意味が痛い程分かる……本当にありがとう。 大きな入口から建物の中に入ると、そこは白を基調とした清潔感のある空間で、いたるところに鉢に植えられた百色華(ひゃくしょくか)が飾られていた。 時間で色を変える花びらは、黄泉の国の住人達の幸せな気持ちを分けてもらって色づいている。 今の自分が花びらに触れたらどんな色に変わるのだろう? マジョリカという愛を手に入れローズピンクに染まるのか。 それとも、そのマジョリカとしばしの別れに悲しむ心は花を枯らせてしまうのか。 傍にある百色華(ひゃくしょくか)にそっと手を伸ばす……が、届く寸前、ヤマちゃんの声に引き戻された。 「それでですね、じゅぶん(・・・・)達オペレーターがどうやって光る道を伸ばすかってゆーとー、まず、操作台から死者のリアルタイム位置情報を掴むです! 掴んだら別場所にある光道(こうどう)生成機を遠隔操作して、光る道の軌道を微調整しつつ……スウィッチウォーンのドーーン! ですっ! それがいつものやり方! でも、今回は屋上に来いって(おさ)が言ってたです! だから みんなで行くですの! エレベーターでレッツゴー200階ですぅ!」 スウィッチウォーンのドーーン! なのか。 あはは、緊張感はゼロだね。 だけど、今はヤマちゃんの明るさに救われるよ。
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