第十五章 霊媒師 打ち上げ、そして黄泉の国の話

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屋上にはすでにバラカスがいた。 その他にも、”初めまして”と挨拶すべき知らない面々がズラリと並び、どうやらみんな光る道のオペレーター達のようだった。 ぱっと見ただけで30~40人はいそうな大人数で、見た目もそれぞれ違っている。 炎の肌を持つ巨大なドラゴンに(バラカスよりも大きい!)、頭が三つに身体は一つの地獄の番犬ケルベロス(ただし可愛い豆柴だが)、超グラマラスなブリキのレディに、軽自動車くらいの大きさのド派手なデコトラ、水の無い宙を泳ぐ妖艶な人魚姫と、まだまだたくさんいるけれど、とにかく全員個性が強すぎるメンバーだ。 しかも騒がしい。 「しゃっせーー!! マジョリカとマジョリカのダーーーーリングッ!!」 「超猛者だよ!! よくもまぁバラカスのオッサンを説得したわ!」 「バラカス(へき)、パネェかんな!! スーパーファイヤウォールだかんな!!」 「不可能を可能にしたオトコ!!」 「地球人は一つしか命がないからね、いつだって全力なんだワン!!」 「あーーいいなぁ!! アタシも地球人と結婚するんだぁ!!」 「私は10(トン)ロングなガルウィングトラックと出逢いたい!!」 「ん? ん? んーーーー! ちょーッ! 二人見て! 手ぇ繋いでるぅ!!」 「ひゃっはーーー!! ラブゥ!! あっまーーーーーーーーい!!」 自分とマジョリカが、指を絡め手を繋いでるのを目ざとく発見すると、まるで祭りのような騒ぎになった。 一瞬で囲まれて、一斉に喋り出すのだが、何を言ってるのか聞き取れない。 多分、どっちから告白したのかとか、なんて呼び合ってるのかとか、そんなようなコトを質問してるようなのだが、なんせ全員、弾薬を自動装填して撃ちまくるマシンガンのようなトークゆえ追いつけないのだ。 この激しいノリはいつものコトなのか、マジョリカもヤマちゃんも難なく受け答えをしているのには驚いた。 女性は一度にたくさんの話を聞けるというが、それをリアルに見た気がした。 とにかく少し落ち着くのを待つコトにして、自分は、職場の同僚にして親しい友人達と楽しそうに話す愛しい妻を眺めていた。 可愛いなぁ……なんて見惚れていると、急に炎のドラゴンにこう話を振られたのだ。 「ジャッキーさんはぁ、マジョリカのどこが好きなんですかぁ? キャー!」 質問しといて照れているのか、頭からボォッ!! と火炎を吹き出しているのが気になるが、マジョリカに恥をかかせないためにも真摯に答えなくてはいけない。 「質問にお答えする前に……みなさん、初めまして。自分、地球生まれの日本人でジャッキーと申します。いつも妻がお世話になっております」 と、ここで日本人らしさを見せつけるべくキッチリと頭を下げた。 それに合わせて「おぉ!!」と歓声が上がる。 「妻の……マジョリカのどこが好きか、という事ですよね? それは……」 手短に答えるつもりだった……が、あまりにも良い質問すぎた。 誰よりも綺麗で可愛くて優しくてしっかり者でそれでいて甘えん坊で柔らかくて温かくて素直で真っ直ぐで……と、これだけは外せないシリーズが止まらなくって、どうやら延々と語っていたらしく、オペレーター達はポカンとしているし、バラカスは肩を震わせ笑っているし、ヤマちゃんは「さすがです!」とメモを取ってるし……やってしまった。 当のマジョリカは、頬を染めて腕を絡め真っ直ぐ自分を見上げて聞いてくれている。 うむ、それで充分だ。 だがしかし妻は可愛い……バラ色の頬、サクランボのような赤い唇、二色の瞳には自分が映り込んでいる。 溜息が出そうな澄んだ目をジッと見ていたら、抗えない磁力に引き寄せられて、オペレーター達もバラカスも見ているというのに……そう、ホント無意識に、気付けば、う っ か り 愛しい妻の唇に自分の唇を重ねていた。 しまった……またやってしまった。 途端、屋上には黄色い大歓声が沸き上がったのだった。
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