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主成分を電気で成り立たせるマザースターは、同じ電気に対して強い吸引力を持っている。
マザースターが落とす電気で形成される死者が近づけば、当然身体ごと引っ張られてしまう。
落とした電気を回収するかのように、マザースターは無言で死者の身体の吸収にかかるのだ。
研究者達は身体を取り込まれないように、特殊な構築を施した厳重なシールドスーツに身を固め調査に挑む。
それでも稀に、シールドスーツにエラーが出ればそこば綻びる。
マザースターはそれを見逃さない。
シールドの小さな穴を目指し、無数の電気触手が襲いかかる。
逃げ切れればいい。
だが吸い付かれたら最後、一気に吸収され、取り込まれ消滅してしまうのだ。
そうなれば不運な死者は一切の存在も気配も残さず、自我もなにもかもを失って、マザースターの一部になる。
そして今度は、意思を持たないただの電気信号となり、黄泉の国に降り注ぐのだ。
それを聞いてゾッとした。
なんだって白雪ちゃんは、そんな危険な惑星に行ったのか。
それに……彼女の腕や首、頬に残るあの傷は、マザースターに取り込まれそうになった跡なのではないだろうか?
「そうだよ、マザースターの電気触手が白雪ちゃんの身体を抉ったんだよ。通常の傷なら、黄泉の国のオートリカバーがタイムラグ無しで修復してくれる。でもね、マザースターにつけられた傷は治りが遅いんだ。微量に残る分解を目的とする電気が傷口に残って、皮膚を抉り続けるの。オートリカバーの修復じゃ間に合わないんだ」
それでも、時間が経てば傷口に残ったマザースターの残留電気は消滅する、それが完全に消え去れば、あとはオートリカバーが綺麗に治してくれるというのだが……
「いい加減にしろっ! 無茶すんなって言ってんだろうが! 白雪は調査員でもなんでもねぇだろ! いくらお前が強いからってマザースターになんか行くなっ!」
バラカスの怒鳴り声に思考は中断された。
バラカスの毛皮の白い部分、これが全体的に赤くなっている。
いつだって自分のペースを崩さない巨大パンダが、あからさまに動揺している。
これに対し白雪ちゃんは、慣れた様子でバラカスを宥めていた。
「本当にゴメンって……でもマザースターにしかないんだもの。どうしてもマーちゃんとジャッキーさんにあげたかったの。それにほら! 無事に戻ってきたんだし、そんなに怒らないでよ。さすがにもう行かないから」
「あたり前だ! 大体シールドスーツはどうしたんだ。そんなもん、光道なんぞに貸してくれねぇだろうが。まさか……ババアか? アイツがいらん事したんだろ? 言え!」
巨大な身体をグィンと折り曲げ、白雪ちゃんにメンチを切っているバラカス。
対し、困ったような顔で笑う白雪ちゃんも一歩も引いていなかった。
自分の現世に戻る話はどこへ……と思いつつ、その分マジョリカと一緒にいれるのだと密かに喜び、バラカスvs白雪ちゃんを見守っていた。
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