第十五章 霊媒師 打ち上げ、そして黄泉の国の話

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「……だからね、”ババア”じゃないよ、私のお母さんです。バラカスの言う通り、頼んだ所で光道(こうどう)にシールドスーツは貸してもらえない。だからって丸腰で行けば消滅しちゃう。……そうだよ、今回お母さんに助けてもらったの。お母さんね、何年も頑張ってシールドスーツ無しでマザースターに行ける薬を造ったんだ。飲めば1時間はマザースターに吸収されないの。まだ公式薬じゃないけど、手続き上の問題だけで近いうち研究者にも出回ると思う」 白雪ちゃんのお母さんも黄泉の国にいるの? マジョリカにそう聞くと、そうだと答えてくれた。 お母さんと言っても、血の繋がりはなく白雪ちゃんのお父さんである王様の後妻なんだそうだ。 色々事情があって大昔である生者の頃、お母さんは白雪ちゃんを憎み、複数回の暗殺を試みたらしい。 何度襲っても死んだと思わせて驚異的な復活をする白雪ちゃんを確実に殺そうと、独学で毒薬の研究を重ね、その執念から結果薬物のエキスパートになったという(今では黄泉の国の天才死者枠にいて、日々各種薬物の研究をしてる)。 だがしかし結局のところ暗殺はすべて失敗。 ちなみに当時は痩せてヒョロヒョロだった一国の王女様が、筋骨隆々な戦闘系に進化したのは、暗殺者対策にと軍隊レベルのメニューで鍛えまくったというのだ(いやはや、やりすぎだろ)。 失敗した最後の暗殺をきっかけに紆余曲折を経て、お互いの誤解を解いて和解した____ 「和解どころじゃないよ。白雪ちゃんのお母さんの、”娘命”っぷりは、バラカスがウチを好きなのと同じくらい”イッチャッテル”って有名なんだ」 えっ!? バラカスレベルなの!? じゃあ白雪ちゃんのお母さんも愛の変態なんだな…… 「とにかく! ババアの造った怪しい薬なんか飲むな! マザースターの取り込みに無効と言うが傷だらけじゃねぇか! 信用できん! それと何度も言ってるが危険な場所に行く時は俺に言え! 全部かわりに俺が行く、小娘なんぞに行かせられるか!」 何人かは確実に殺った(やった)コトがありそうな凶悪な目で、白雪ちゃんにメンチを切り続けるバラカスなのだが……おやぁ? 「ありがとう。でもね、この傷はお母さんのせいじゃない。赤い電塊(でんかい)がすぐに見つからなくて、マザースターにトータル1時間2分いた私のせいよ。薬の効果は抜群だった。ただ、はみ出た2分間でちょっと触手に追われただけ。ねぇ、バラカス。国の為に毎日頑張ってるお母さんを侮辱するような事は言わないでちょうだい。それに私はアナタが言う程弱くない。小娘扱いは心外よ」 白雪ちゃんにピシャリと返されたバラカスは、「お、俺はただ、白雪が心配なだけで……」と明らかに挙動不審だ……おやぁ?(2回目) 「ねぇ、マジョリカ。もしかしてバラカスってさぁ、」 愛しい妻の可愛い耳にコソっと聞いてみる。 すると、 「あ、分かっちゃった? そうだよ、バラカスは白雪ちゃんが好きなの! でもねぇ……相手にされてないというか、まったく伝わってないというか……なんだ」 やっぱりか。
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