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「そんなコトより、マーちゃんとジャッキーさんに渡したい物があるの!」
クルッとバラカスに背を向けた白雪ちゃん。
その時の巨大パンダの表情は哀愁を誘った。
同じ男として気持ちは分かるぞ、惚れた女の一挙一動に気持ちは激しく浮き沈みするんだよな。
いつか伝わるといいな、バラカス。
「わぁ、ありがとう! でもね、ウチ怒ってるんだよ! いくら白雪ちゃんのママが造ってくれた薬飲んだからって、マザースターに行くのは危険すぎるよ! ウチ……白雪ちゃんになにかあったら……」
二色の瞳にぶわっと涙が溜まり、瞬きと同時に雫が零れ落ちたマジョリカは、白雪ちゃんに抱き着いてギュゥっとしたまま離れない。
「白雪ちゃん、自分からもお願いします。あまり無茶をしないでほしい。自分達を想っての事で、それは本当に感謝します。でもね、白雪ちゃんに何かあったら自分も辛いよ。これから現世に戻るけど、いつか黄泉の国に帰ってきたら、一緒に酒でも飲みたいんだ」
この人がいたから分岐を間違えずに済んだのだ。
下手すりゃ泣いてるマジョリカを連れて逃げていたかもしれない。
そうなればマジョリカの大切な物を壊し、バラカスを白雪ちゃんを、そして優しい仲間達を悲しませ失望させただろう。
「……ジャッキーさん……私、二人を引き裂く冷たい事いっぱい言った。だからジャッキーさんには嫌われてると思ってた。大好きなマーちゃんの大切な人だもの。仲良くしたいって思ってたんだ……嬉しいよ……ありがとう。それとごめんなさい、もうマザースターには行かないから。心配かけちゃったね」
広げた鋼の両腕はマジョリカだけでなく、自分も一緒に回収されて、逞しいその胸に抱きしめられた。
マジョリカの甘い匂いとは違う、柑橘系の爽やかな香りが鼻をくすぐった。
その時、背中を焼き尽くすような強烈な視線を感じたが……とりあえず気付いてない振りでやりすごしたのだ。
「渡したい物っていうのはこれなの」
そう言って差し出したのは、赤い色をした透明の、クリスタルのような球体だった。
形としては地球の果物、リンゴによく似ている。
「これはね、マザースターだけにある希少な電塊なの。色はブラックとレッドがあるんだけど……レッドはね、永遠の愛を約束してくれると言われてるんだ。二人はこれからしばらく黄泉と現世に離れてしまうでしょ。だから電塊をお守り代わりに持っていられたらなって……それで取りに行ったの」
そう言って笑う白雪ちゃんの身体は傷だらけだった。
オートリカバーも間に合わないケガを負ってまで、危険なマザースターに行ってくれたのか……駄目だ、ありがたくてオジサン泣きそう。
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