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「ジャッキ……」
マジョリカは泣いていた。
さっきまでテキパキとヤマちゃんに指示を出し、頼れるチーフっぷりを見せていたのに、今では二人でいる時の、グズグズに甘える泣き虫な妻の顔に戻っていた。
「マジョ……泣かないで」
涙で濡れる瞼に何度もキスをして、胸の中に抱きしめる。
震える肩が小さくて頼りない。
この娘を置いていくのかと思うと身が裂かれるように辛かった。
「ジャッキ……ジャッキ……これ、」
「ん?」
しゃくりあげながら左手の薬指を目の前に差し出したマジョリカは、
「ウチ……ダイジョウブだよ、だって……ジャッキから貰ったリングがあるもん」
ぜんぜん大丈夫には見えない。
たぶん自分が現世に行った後、声を上げて泣くのだろう。
それでもこの娘は、大丈夫だと言っている、きっと自分を心配させない為に頑張っているのだ。
ああ、愛おしくてたまらない。
「マジョ……ん? コッチ見て? キスしよう?」
「…………する」
細い顎を上げるまでもなく、マジョリカは目を閉じて顔を上げた。
艶のある赤い唇に自分の唇を押し付けると、少し辛く涙の味がした。
「マジョリカ……自分の愛しい人、大切な妻、永遠の愛を誓うよ、アナタ以外に心は動かない、現世に戻ってもそれは変わらない」
また唇を重ねる、何度でも重ねる。
「うん……ウチも誓う。ウチの心も身体もなにもかもジャッキのもの。他の誰にも揺れたりしない」
真剣な眼差しで誓うマジョリカが愛しくて、やはりまたキスをする。
「マジョリカ、忘れないで。二人は離れていてもいつだって一緒だよ。二つの心臓は一つになった、それに白雪ちゃんがくれたピアスもある」
一対のピアスを自分は左耳に、マジョリカは右耳につけている。
「うん、離れてても一緒なの」
少し笑ってくれた。
嬉しい、幸せだ。
「それから毎日毎晩話をしよう、その日あった事を報告し合おう。毎日毎日好きだと言うよ。アナタが安心して眠りにつくまでおしゃべりしよう」
ぱぁっと顔が華やぐマジョリカ。
でもすぐに唇を尖らせて、
「もしいつまでも安心できなかったらどうするの? 途中でおしゃべりやめるの?」
と子供みたいな質問をする。
「やめないよ。マジョが安心するまでいつまでだっておしゃべりするよ。自分はね、アナタが笑ってくれるのが幸せなの。アナタが不安だと楽しくないの。だからね、これから遠距離になってしまうけど、淋しいとか不安だとか思ったら、すぐに言ってほしいんだ。うっとおしいと思われるとか考えないで」
自分がそう答えるとソワソワと戸惑って、
「……いいの? ジャッキ大変になっちゃうよ?」
そう尻すぼみに聞いてくる。
何を遠慮してるのだろう?
アナタの為なら、なんだってできるのに。
「いいんだ。自分を困らせない為に無理して笑うより、当たり散らしてくれた方が分かりやすい。分かれば不安をなくす努力ができる。自分を信じてほしい。マジョが何をしても何を言っても絶対に嫌いにならないから」
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