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ドキドキしながら答えを待つ。
が、しかし、待てども待てども田所さんは一向に口を開いてくれない。
あれ?
僕の見た映像って間違えてた?
目の前の田所さんは、どこか居心地悪そうに口を閉ざしたまま横を向いている。
「あのー田所さん?」
『は、はい?』
「あ、えっと、僕、さっき田所さんの過去が視えたっぽいんですけど……田所さんの容姿、間違ってましたかね……? サラサラの黒髪に、くっきりとした二重瞼、まつ毛がすごく長いですけど、お化粧してる感じじゃないですよね? アイドルというより女優さんみたいにきれいな女の子が見えたんですよ。あの子は田所さんですよね? ね、そうでしょう?」
僕は彼女の答えが聞きたくて、そっぽを向く田所さんの前に回り込む。
そりゃあもうしつこいくらいに。
逃げ場を失った田所さんは、一瞬動きを止め、だけど何か諦めたように大きく息を吸い込むと一気に僕にまくし立てた。
『もう! いい加減にしてください! 確かに高校生の頃、肩まで髪を伸ばしてました! 日焼けしにくい体質だから色も白かったかもしれません! 目が二重なのは父に似たからです! でも、岡村さんが言うような、その、ア、ア、アイ……とにかく! そんなんじゃありません! 田舎の平凡な女子高生でした! もう……わざとですか……?』
「え? え? え? なんで怒ってるんですか???」
『もう! さっきみたいな言い方されて、それ私ですって言える訳ないでしょう? 岡村さんぜんぜんわかってない! でも、ありがとう!!』
「え! あ! な、なんかすみませんでした!」
なんだかわからないけど、田所さんを怒らせてしまったらしい。
僕は視たままを忠実に伝えたつもりだったのに。
でも、わからないけど、ありがとうって言ってたから大激怒って訳でもなさそうだ。
多分僕が悪いのだろう……申し訳ない、とりあえずあやまっておこう。
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