第十五章 霊媒師 打ち上げ、そして黄泉の国の話

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球体は平たい一本の道へと進化を遂げた。 上部は薄いベールのような雲を突き抜け、遥か彼方天空へと伸びている。 そして下部側、キラキラと輝く道は自分の足元に起点を置いていた。 「ジャッキ、」 ギュウッと胸に抱き着くマジョリカにキスをして、愛してると何度も囁いた。 「マジョリカ……現世(むこう)に着いて、落ち着いたらすぐに連絡するからね」 「うん」 「淋しかったら我慢しないで、なんでも言って。当たり散らして」 「うん」 「浮気なんて絶対ないから安心してね、マジョしか愛せないよ」 「うん、信じてる。ウチとジャッキは夫婦だもん」 「そうだ、自分達は夫婦だ。マジョ、愛してる……必ず帰ってくるから、いい子で待ってて」 「うん、……ジャッキ、ウチも好き、大好き、愛してる。ウチ、いい子で待ってる。ジャッキ、いってらっしゃい」 二色の瞳が淡く輝いている。 ”いってらっしゃい”と笑ってくれたマジョリカに恥ずかしくないよう生きなおそう。 そしていつか帰ってくる時には、お土産をたくさん持ってくるんだ。 「ありがとう。マジョ……愛してる。いってくるね」 指を絡め両手を繋ぎ、最後のキスをした、 いや、最後じゃない、 またキスをする、 帰ってきたら、またキスをする、 何度も何度も____それまで少し我慢をするだけだ。 振り返り、優しい友人達と黄泉の親父に「ありがとう、また」と手をあげた。 「またね」と繰り返す友人達は次々に指を鳴らし出した。 フラワーシャワー、というものだろうか。 天からはたくさんの百色華(ひゃくしょくか)の花びらが虹色に染まり、優しく降ってきた。 赤に青に黄色に紫____ そして、自分とマジョリカに降る花びらはローズピングに色を染め直す。 絡めた指をゆっくりとほどいた。 一歩、光る道に足を掛ける。 義足のつま先が輝く道に触れた瞬間、抗えない強い力に引っ張られた。 「ジャッキ! 愛してる、」 微かに耳に届いた愛しいマジョリカの声。 自分も同じだ。 どうしようもないくらい愛してる。 だからいい子で待っててくれ。
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