第十五章 霊媒師 打ち上げ、そして黄泉の国の話

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◆ ガラガラガラ! 「また岡村さんの負けですね」 バラバラに崩れた木のパーツを、顔を歪ませて眺める水渦(みうず)さんは、たぶんすこぶる喜んでいる。 同じ大きさの木の立方体を重ねてタワーにし、それを崩さないように順番でパーツを取り出すゲーム、ジェ〇ガを二人でしているのだ。 重たすぎる水渦(みうず)さんのリュックの中には、こういった家の中で出来るゲームや遊び道具がたくさん入っていた。 水渦(みうず)さんは昨日ネットで、【打ち上げ】【ホームパーティー】【盛り上がる】で検索し、みんなで遊べるものを持参するのが流儀と斜め上な解釈をしたらしい。 でもま、楽しいからいいんだけどさ。 それにしても水渦(みうず)さんはジェ〇ガがうまい。 本人曰く「空間能力に長けていますので」という事だ。 ちなみにゲーセンのUFOキャッチャーでも、その空間能力は惜しみなく発揮され、商品ゲット率は、なんと100%なんだそうだ。 てか、あのリュックの中には、かの有名な【Game of Life(人生ゲーム)】も入ってたのだか、今時ボードゲームよ? あのデカイ箱をどうやってリュックに入れたんだって感じだよ。 だけど昨日の今日でこれだけ用意してくれたんだ。 よっぽど打ち上げを楽しみにしてくれてたのかと思うと、なんだか水渦(みうず)さんが可愛く思えてしまう(本人に言ったら怒られそうだけど)。 「うぅ……マジョ……」 あ、ジャッキーさんが起きた。 まったくこの愛すべき先輩霊媒師は、焼酎の飲みすぎで話の途中で寝ちゃったのよね。 てか、どんな夢見てたんですか、“魔女”の夢ですか、ファンタジーですか。 「あ、おはようございます。ジャッキーさん寝ちゃったから、ソファにあったブランケット勝手にかけちゃいました」 お腹を冷やしたら大変だからね。 一応かけておいたんだ。 「うわぁ!! 自分寝ちゃったの!? ゴメン!」 がばっと飛び起きたジャッキーさんは、ちょっと黙った後、探るような顔でこう言った。 「ねぇ、エイミーさん、水渦(みうず)さん。その……自分、どこまで話した?」 ジャッキーさん、顔が真っ赤だ。 どうしたんだ? 「お話は、陣で街まで行ってタッキー店長に整えてもらったコトまでです。いやぁ、黄泉の国ってスゴイですねぇ! 陣で移動に買い物もオールフリー! 僕、いつか黄泉の国に逝くの楽しみになってきました!」 僕の答えに、はぁぁぁぁ……っと脱力するジャッキーさんだったが、再びガバッと顔を上げ、今度は水渦(みうず)さんに向き直る。 「……あのぉ、水渦(みうず)さん? もしかして……話の続き、印で霊視なんて……してないよね?」 どうしたんだ? めっちゃガクガクブルブルしちゃってるけど、いつもの余裕は一体どこへ? 聞かれた水渦(みうず)さんは、ニタァと笑い、 「視られて困る事でもあるのでしょうか? 例えば……恋愛関係、」 あえて途中で話を止めた。 出たよ、こういうネチネチは相変わらずだ。 てか恋愛関係? なにそれ、僕も知りたい。
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