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レキナくらいにあばばばば! なジャッキーさんに、フッと笑った水渦さんは、散々勿体つけてからこう言った。
「当然、霊視ました」
「あ゛ーーーーーーーー!!」
叫ぶジャッキーさんは屍になりかけている……が、水渦さんの話の続きに屍化が止まった。
「ですが……すぐにやめました。先程も言いましたが、人の幸せな話は面白くありません。夜の大草原に美女と二人なんて、ツマラナイ事この上ありませんから」
シューーっと変な音をさせながら、倒れ込むジャッキーさんは、しばしのフリーズの後に再起動された。
そして、
「優しい子だね。視ないでいてくれてありがとう」
と水渦さんの短い髪を、犬の仔を愛でるかのようにワシャワシャと撫でた。
対し水渦さんは、
「別に優しいからではありません。私は人の幸せが不愉快なだけですから」
ぷいっと横を向いて素っ気ない。
……あれ?
もしかして水渦さん、頭を撫でられて照れてるんですか?
無表情すぎてわからないけど、なんとなくそう感じ、そしてなんとなく僕の心がモヤモヤした……なんでだろ。
とりあえず分からない事はそのままに、僕はジャッキーさんに声を掛けた。
「あのー、もし良かったらジャッキーさんも一緒にジェ〇ガをしませんか? 水渦さんが、この手のゲームをいっぱい持ってきてくれたんです」
「いいねぇ、ジェ〇ガなんて久し振りだ!」
こうして三人、たっぷりジェ〇ガを楽しんで、そしてその後【Game of Life】に本気を出した。
子供の頃に返ったような楽しい時間だ。
ゲームをしながらいっぱいおしゃべりをしたのだが、ジャッキーさんの話はブッ飛んでいた。
まず、ジャッキーさん専用【黄泉の国、第98霊力サーバー】は、話の最初に出てきたパンダのバラカスさんの自作である事(というか第1から第9999まで全部自作らしい、スゴイなオイ)。
そのバラカスさんは、ジャッキーさんの父親みたいな存在であるという事。
さらにこれが一番驚いたのだが、実はジャッキーさんは妻帯者で、奥様は黄泉の国で知り合ったイタリア人の死者の方だというのだ。
初めて会った時の自己紹介で独身だと言ったのは、説明がややこしくなるのを避る為。
ジャッキーさんの家族や友人まわりの人達にも、説明の困難から独身主義で結婚の意思はないと公言しているとの事だった。
奥様は死者なのか、と一瞬思ったけど、正直そこにはさほど驚かなかった。
だって僕達は霊媒師で、死者の姿を視て声を聴いてお給料貰ってるんだもん。
霊媒師だからこそ、死者とのコミュニュケーションに支障はない。
好きになった人がたまたま死者だったって話でしょ?
おいくつの方なんですか?
と聞いてみたら、ジャッキーさんの8才年下の今年40才なのだと教えてくれた。
ちょうどいい歳の差ですね、と何の気なしに言ってみたら、
「自分の奥さんはね、享年17才なんだ。だから見た目は今でも17才なの。もうめちゃくちゃ美人で可愛いんだよ! あ、でも誤解しないでね、17だから好きになったんじゃなくて奥さんだから好きになったんだ!
あの娘がどれくらい可愛いかっていうとね、」
と、その後がすごーく長かった。
ふふふ、でも、いいや。
だって奥様の話をしてるジャッキーさん、とんでもなく幸せそうなんだもん。
僕まで幸せな気持ちになっちゃうよ。
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