第十五章 霊媒師 打ち上げ、そして黄泉の国の話

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三人で丸くなり、お次はウーノに興じつつ、ジャッキーさんが霊媒師になった経緯を聞いていた。 「きっかけはね、弥生さんなんだ」 手持ちのカードをジッと見つつ、ジャッキーさんは弥生さんの名前を出した。 途端、水渦(みうず)さんの眉間にしわが寄る。 そうだった、ウチの女性霊媒師の二人は仲が悪いのよね。 「退院して、少ししてから例の廃ビルに行ってみたの。ちょっと怖かったけど、コッソリ覗いて、頭の上の玉が真っ黒だったら走って逃げるつもりでさ」 「なんだってわざわざ行ったんですか? また襲われたら怖いじゃないですか。あ、ウーノ!」 残り1枚になったカードにウキウキしながらウーノ宣言。 悔しそうな水渦(みうず)さんには悪いけど、これは空間能力関係ないからね。 「だって気になるじゃない。1度は自分を殺した悪霊が4体もいるんだもの。放っとけば、他の人に被害が出るかもしれないし。それで、夜中に行ってみたら……いやぁ、正直後悔したよ。着いてすぐに悪霊達を見つけたんだけど、4体共、頭上の玉は真っ黒でさ。これはダメだ、バラカスの忠告通り逃げるんだ。明日になったらお寺かどこかに相談しようと思ってたらね、来たのよ、弥生さんが」 当時の事を思い出してるのか、眉はすこぶる八の字だ。 「弥生さんはどうして廃ビルに?」 「飲みに行った帰り道だったらしい。しこたま飲んで酔っぱらって、フラフラ歩いて偶然通りかかったんだって。迷ったよ。自分が傍にいる事はまだ悪霊達に気付かれてない。そのままそっと逃げようと思ってたのに、酔った女性が廃ビルに向かって歩いてくんだもの」 「やりそうですね……」 まさか目の前の酔っぱらいが、手練れの霊媒師だとは思わないジャッキーさんは、千鳥足の弥生さんを保護するべく近づいたそうだ。 ここは危険ですよ、と声を掛けようとしたその時、弥生さんは突如バカデカイ声で笑い出した……ってイヤな予感だ。 弥生さんは、基本怖いモノがない。 生者だろうが死者だろうが、何人(なんぴと)たりとも敵ではないのだ。 思った事はすべて口に出さなきゃ気が済まない人なのに、夜中のテンションは笑いの沸点を下げるとも言っていた。 そして弥生さんの目に霊体は白黒に映る。 恨み辛みの強い悪霊になればなる程、その霊体は真っ黒に視えると言うのだが……聞けば案の定。 『ぎゃははははははは! 出ったーー! 黒タイツ野郎が4体もっ! オマエら悪霊だろ! 全身黒すぎ真っ黒だわ! そんな恰好じゃ股間のモッコリが目立つし……と思ったら、ケッ! 揃いも揃って大したブツじゃねぇなぁ! ささやかですねコノヤロー! おまいらの股間は大和撫子ですかぁ? 控え目ですかぁ? ぎゃーっははははははは!!』 うわぁ……下品すぎる……酷すぎる…… 「いやぁ、焦ったよ。弥生さんの暴言に悪霊達は超激怒してるしさ。 ほら、男という生き物は、髪の話と股間の話には敏感だからね。大事な股間を大和撫子扱いされちゃあ、そりゃ怒るよ。自分なら泣くね」 ですよねぇ……僕も嗚咽を漏らしてしゃがみこむと思います。
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