第十五章 霊媒師 打ち上げ、そして黄泉の国の話

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____や、大和撫子じゃねぇぞ! ____そ、そうだ、そうだ! 「激怒の悪霊達だったんだけど、心当たりがあったのか完全否定できなくてね。その様子に弥生さんはまた大笑いしちゃってさぁ」 最悪だ。 てか、悪霊達に同情するよ。 通りすがりの女性に、いきなりそんなコト言われたら……ねぇ? 「笑われた悪霊達は、『ぶっ殺してやる!』とかなんとか言いながら、一斉に飛び掛かったの。マズイと思った自分は、全力で走って弥生さんの前に出たんだ」 1度は悪霊達に殺されたジャッキーさんだったが、2度目はそう簡単にはやられなかった。 なんてったって今回は、黄泉の父バラカスさんの自信作、第98霊力(パワー)サーバーあるのだ。 『IDナンバー:JKC19540407、パスワード※※※※※(ピーーー)、我に霊力(ちから)を転送せよ! 前方1メートルに防御陣展開! 悪霊達から我らを守れ!』 緑色に発光する幾何学模様の陣が、ジャッキーさんと弥生さんを守る壁となり展開されて、悪霊達は後方に大きく弾かれたそうなのだが……み、視たい! その陣、めっちゃ視てみたい! 「退院してから練習がてら、サーバーに何度もアクセスしてたからね。咄嗟でもうまく霊力(ちから)を使う事ができたんだ」 ____な、なんだ、オマエ! ____邪魔するなぁぁぁ!! 弥生さんを殺そうとした悪霊達は、ジャッキーさんの妨害に激高し、2ターン目の攻撃に入った。 『お嬢さん、ここは自分が食い留めますから逃げてください!』 ジャッキーさんが二重三重に防御陣を展開しながらそう言うと、 『……もしかして、アタシを助けようとしているの?  ふぅん、誰だか知らないけど良いオトコじゃない、やだ惚れそう。これから二人で飲み行くか。つーか、ナニコレ? アンタも霊媒師? オモシロイ霊力(ちから)ね』 逃げる気ゼロの弥生さんは軽口をたたき、ジャッキーさんの陣を興味津々で指で突っついたり眺めたりしていたそうだ。 『なにしてるの! 陣はいいから早く逃げてちょうだい!』 一向に逃げようとしない弥生さんに、「いいから、はよ行け!」と言い続けるジャッキーさん。 悪霊達は、重なる防御陣にアタックを掛けまくり、一枚目に亀裂が入り始めている。 弥生さんさえ逃げてくれれば、後は防御陣をもう何枚か展開し、足止めしている間に逃げる事ができるのだ。 なのに巻き髪の酔っぱらいは、ゴキゲンで防御陣に夢中になっていた。 『こんなに純度の高い霊力(ちから)は初めて視たわ。印も結んでなかったのに……ちょっと! アンタやっぱり霊媒師でしょ? それかエクソシスト? どっかの会社に入ってるの? でなけりゃフリー?』 両手で陣をナデナデしつつ、ワクテカ顔で振り向く弥生さんの言ってる事がよく分からない。 霊媒師? エクソシスト? 会社? フリー? ……とりあえず、 『お嬢さんの言ってる意味が分からない! ただ、自分は今無職なので()フリーです! ねぇ、お願い! とっとと逃げてちょうだい! オジサン、防御で精一杯なの!』 半泣きで弥生さんに訴えた。
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