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『マジで! そんな霊力を持ってるのに、霊媒師でもなけりゃエクソシストでもない! 社会的な無職なんだ! ほーほーほー、いいじゃん!』
陣の放つ緑色の光に照らされた弥生さんは、すこぶる笑顔で”社会的な無職”であるコトに食いついたそうだ。
で、
『無職君、アンタ名前は? アタシは弥生。奢ってやるから今から飲み行くぞ! んで、夜が明けたら社長んトコ行こう! それだけの霊力があれば問題ないわ。あ、もしかして、どこか別の会社で内定とか貰ってる? 貰ってるなら断ってね。じゃ、行くぞー!』
うわぁ……ジャッキーさんの都合とか、ガン無視じゃないですか……って、その前に悪霊達はどうすんの!
「もうねぇ、自分には弥生さんが何を言ってるのか、さーーーーっぱり分からなくてさぁ。目の前に4体も悪霊がいて襲われてる最中だってのに、防御陣視てテンション上がった挙句、『飲み行くぞ!』だろう? しかも『夜が明けたら社長んトコ行こう!』って、徹夜で飲む気か? 社長って誰? こりゃ怪しい……変な会社に連れ込まれちゃうって思ったんだ」
困った顔で笑うジャッキーさんだったが、どこか楽しそうにも見えた。
「それで、飲みに行ったんですか? てか、悪霊達は?」
僕がそう聞いてみると、
「行ったさ。徹夜どころか、次の日のお昼まで飲んだんだ。その足で会社に連れていかれてさ、先代に……って、当時は社長だけど、会いにいったの。悪霊達はね、」
ははは……と力なく笑ったジャッキーさん。
『ヨシ、決まり! 行きつけの飲み屋がいっぱいあるんだ! この時間から飲めるトコで時間無制限って言ったら……あるある! ついて来い!』
すっかり悪霊達に興味を失った弥生さんが、背を向けて歩きだす。
『ちょっと待って、お嬢さん! あの悪霊達を忘れないで! 二人でココ離れたら、そのうち防御陣突破されて追いかけてきちゃうでしょ! 自分がギリギリまで食い止めるからお嬢さんだけ逃げてちょうだい!』
弥生さんが悠長な話をしている間にも、悪霊達は防御陣にアタックを掛け続けている。
そろそろもう数枚陣を張らなきゃ危ない……と焦っていたら、
『あぁ? ああ。股間が大和撫子なアイツらが心配なのか。つかさ、アンタ、アレらが悪霊だって分かるんだね』
『大和撫子って……あぁ、いや、なんでもない。まぁね、分かるよ。自分、前に一度アイツらに襲われて生死の境を彷徨ったんだ。それに頭上の玉が真っ黒だ。人を殺す事にためらいのない凶悪な悪霊達だよ』
『へぇ、ますます気に入ったわ! アンタを社員で紹介すれば社長から金一封が……いや、コッチの話よ、気にしないで。おk! アイツらをなんとかすりゃあ、素直についてくるのね? 約束よ? 破ったらボコボコだかんな!』
え……適当に言い訳して、弥生さんからも逃げようと思ってたのに……と汗を垂らした次の瞬間、ジャッキーさんは信じられないモノを視たそうだ。
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