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『オマエら邪魔だ。アタシはこれからデートなんだよ。で? 成仏する気は? ってメンドクサ。いっか、聞かなくても。こんだけ黒けりゃ滅しても怒られないだろ』
何枚もの防御陣を展開させて、攻撃を受けないようにするのが精一杯だったジャッキーさんの目の前で、片手を高く突き上げた弥生さんは、聞き取れない小さな声で何かを呟いた。
直後、握られた拳の指の隙間から、紫色の強い光がスター状に溢れだす。
溢れた光はすぐに互いを絡めるように蠢いて、僅かな時間を消費した後、鈍く光る一本の刀へと姿を変えた。
『え……ちょっ……お嬢さん……それ、』
『ああ、待ってろ。すぐに済む』
その言葉に二言は無かった。
ガギンッ!
刀の柄を両手に握り直すと、細い足が地を蹴った。
スカートの裾を翻し予想外の俊足で駆け出すと、壁となる防御陣を一枚、二枚、三枚と通過して、瞬き四つで悪霊達の前に出る。
一瞬の事で呆気にとられる悪霊達に『バイバイ』とだけ呟くと、握った刀を後方に引き、半月を描きながら一気に真横に振り切った。
『え……、』
言葉を失うジャッキーさんの耳には、おぞましい断末魔が聞こえたそうだ。
そして悪霊達の霊体は濃霧となって、やがて完全に姿を消した。
『これでいいか? じゃ、飲み行くぞー!』
踵の高いサンダルをコッコッと鳴らして歩き出す弥生さん。
滅した悪霊達よりも、ジャッキーさんと飲みに行くコトにベクトルが向いていた。
「いやぁ……あの時の弥生さん、最高に格好良かったよ。あれほどバラカスに言われてたのにさぁ、頭上の玉が真っ黒な悪霊達を文字通り瞬殺しちゃったんだもの。でもね、これで飲みに行くの断ったら、悪霊達より怖いかもと思ってねぇ」
弥生さんの行きつけの、”閉店時間はフィーリング”な飲み屋さんで、翌昼まで飲まされたジャッキーさんは、『もう飲めない、眠い、気持ち悪い、帰らせて』と懇願するも、休む事も許されず、尻を蹴られて会社まで連れて来られたそうだ。
先代(当時は社長)にジャッキーさんを紹介すると、あまりの酒臭さとボロボロさに『ウチの弥生ちゃんがごめんね!』とすぐに察してくれたそうだ。
そして履歴書不要なウチの会社は、先代(クドイようだが当時は社長)の霊視によって、ジャッキーさんの今までを知り……
『志村君は、苗字よりも”ジャッキー”って呼ばれる方が好みなんだね。じゃあ、これから私もジャッキーさんと呼ばせてもらおうかな。覚えてもらうコトは多いけど、それだけの霊力があれば申し分ないよ。入社に必要な書類はすぐに用意するからね。それで、いつから来れる?』
そう言ってニコニコ笑う先代が(だから当時は社長)、長年無職で苦しんできたジャッキーさんには、仏様に見えたそうだ。
わ、分かる!
僕も就活に失敗しまくってた頃、先代が神様仏様に見えたもの!
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