第六章 霊媒師OJT-2

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『もういいです! で、さっきの話の続きですけど上京して事務の仕事始めて1年後に同じ会社の上司と付き合ったんです! 初めての恋人です! その後、子供ができて親に言わずに入籍しました! で、その後、夫がリストラにあって、仕事も探さずギャンブルとお酒で借金作って、暴力振るわれて、極貧生活の中なんとか子供育てて、最後には夫に殺されました! はぁ……』 え、ちょっと、すごぶるハードな内容を、そんな雑に話さなくても……。 「あの……田所さん? やっぱりまだ怒ってます?」 僕はおそるおそるお伺いを立てる。 怒ってません! と、明らかに怒った口調の田所さん……だったのだが、 『ごめんなさい……ただ……私……あまり誰かに容姿を……褒められた事がなくて……動揺してしまって、それに今はこんな顔をしてるし……からかわれたのかなって、、でも、岡村さんはそんな人じゃないし、でも、こっちが恐縮する程褒めてもらって、もうなんて言ったらいいかわからなくて……恥ずかしくなってしまって、それで大声出してしまったんです……本当にごめんなさい』 そう言ってしょんぼりと頭を垂れる田所さんに僕はハッとした。 ああ、そうだ。 今の田所さんは顔に大けがを負っているんだ。 それなのに……そんな女性に容姿の話を出してしまって僕はなんて無神経なんだ。 まただ、僕は浅はかだ。 霊視ができたかもしれないという裏付けがほしいあまり、彼女の気持ちをまるで考えていなかった。 「田所さん、僕、また無神経な事を言ってしまいましたね。本当にごめんなさい」 僕は深く頭を下げた。 さっきのような“怒っている理由はわからないけど、とりあえずあやまる”のとは違う。 本気の謝罪だ。 『え! いいの! そんな! やめてください! 私、怒っていませんよ? 動揺しただけ!』 「でも……」
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