第十五章 霊媒師 打ち上げ、そして黄泉の国の話

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子供みたいな先輩霊媒師を宥めるべく、ジェ〇ガを提案したというのに、それもイヤなのか無視をする。 もー、僕はいいけどジャッキーさんが困っちゃいますって、と思っていたら、当のジャッキーさんは声を上げて笑い出した。 「あはははは。水渦(みうず)さんは素直な子だ。よっぽど悔しかったんだねぇ。そうかそうか、女の子はそれくらいでいいんだよ。不満や不安があっても無理に笑う子もいるだろう? 男は馬鹿だからね、それじゃあ気が付けないんだ。当たり散らしてくれた方が分かりやすい。分かれば何とかしてあげられるもの」 そう言って少し遠くを見たジャッキーさんは、すぐに水渦(みうず)さんに向き直る。 「水渦(みうず)さん、ジェ〇ガもウーノもしたくないの? じゃあ【Game of Life(人生ゲーム)】ならどう? ……ん?」 ドキっとするような優しい目で、水渦(みうず)さんを覗き込むジャッキーさんに、ヘソ曲げ霊媒師も今度ばかりは素直に頷いた。 てか……猛獣使いですか。 当然のようにボードのセッティングは僕、な流れになんの疑問も持たずにセットしていると、水渦(みうず)さんがジャッキーさんにこう言った。 「志村さん……その耳。ピアスなんてしてたんですね。気が付きませんでした」 ピアス? と、僕も目線を上げてみる。 「あ、本当だ! それはルビーですか? すごくキレイな赤色だ」 耳に手をやるジャッキーさんは、なんとも言えない表情で「この8年、ずっとしてるんだ」とだけ答えてくれた。 その空気から、赤いピアスがとても大事な物なのだと伝わってくる。 「二人とも、好きな人はいるのかい?」 突然の質問だった。 それに対し答えない水渦(みうず)さんと、「猫又の大福です!」と答える僕の温度差と言ったら……もう。 「あのね、もしも好きな人がいたとして、その人が同じ現世にいるのなら、迷ったりしないで素直にぶつかるといい。想いが通じ合えば無敵になれる。毎日が幸せで、いつもより優しくなれて、困難にも立ち向かえるんだ。ぶつかってみて残念ながら想いが届かなくても、何もしなけりゃ後悔するよ。……ねぇ、水渦(みうず)さん。自分はすごく、そう思うんだ」 え、ちょ、水渦(みうず)さんだけですか? 僕にも言ってくださいよーなんて、ふざけてみたけど、笑ったのはジャッキーさんだけだった。 「なんて、説教臭かったかな? これだからジジィは困ったもんだ。あ、エイミーさん、ボードのセッティングありがとう! さぁ! もう一回だけゲームをやって、これが終わったら少し早いけど夕飯にしない? どうせならみんなで食べたらおいしいよ」 いいんですか! ぜひ! それから今日のレシピもぜーんぶ教えてください! そんな僕の欲張りセットに「もちろんだよ!」と笑ってくれるジャッキーさん。 水渦(みうず)さんの機嫌も直ったし、いやぁ、良かった良かった。 その後、【Game of Life(人生ゲーム)】と、みんなで食べるお夕飯を大いに楽しんだのだ。 あぁ、本当に良い一日だった。 ジャッキーさんにも水渦(みうず)さんにも出会えて良かった。 またこのメンバーで集まれるといいなぁ。 結局この日の帰りは終電だった。 水渦(みうず)さんと歩く月夜道。 風に冷たさがなくなって、初夏が近づいているのだと思わせる夜だった。 霊媒師 打ち上げ、そして黄泉の国の話__了
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